世界で最も有望な投資先

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2010年10月20日

  • 長谷山 雅巳
今後1年において、世界で最も有望な投資先は、ブラジルと中国だという。これは、ブルームバーグが世界の投資家やアナリスト1400人あまりを対象に、9月16日から17日に実施したアンケート調査結果の一つで、両国は同列で1位となり、3位にはインドが続いている(9月21日報道)。この調査は四半期ごとに実施されており、ちなみに、前回6月の調査では1位が米国で、ブラジル、中国、インドの順となっていた。前回と比較すると、米国は今回4位に転落した形となるが、これは、米国が大きく票を減らしたことに加えて、ブラジル、中国、インドがいずれも前回から票を増やしたことが要因である。

米国が票を減らしたのは、投資家の予想と比較して弱めの経済指標が公表されたことで、景気の2番底懸念が浮上したことが大きく影響したものと想像される。他方、ブラジル、中国、インドも足元では一部の経済指標に鈍化が見られるものの、米国をはじめ先進国と比較して遥かに高い成長を続けている。しかも、その成長は、外需一辺倒に依存しているのではなく、内需が牽引役として重要な役割りを担うようになってきているのだ。こうした動きが、投資家の期待を集める背景となっていると思われる。

これらの国々に対する高い期待は今に始まった訳ではないが、リーマン・ショックからの力強い回復を見たことで、投資家の注目度はさらに高まったことがうかがえる。そして、ここ数ヶ月のスパンで見ると、先進国の景気に先行き不安感が生じる中で、新興国が堅調さを維持している姿を、有望な投資先と重ね合わせる投資家の意識を示したのが、今回のアンケート調査結果というように捉えることができる。実際、こうした投資家評価の高まりは新興国へ向かう資金を拡大させ、当該国の通貨や株価などの上昇を促している。

中でも、ブラジルは、2014年にサッカー・ワールドカップ、2016年にはオリンピックと、大規模なイベントの開催を控えている。これらのイベントは、大規模なインフラ投資に対するニーズが高まるとの想定から、ブラジル経済の好調が続くとの期待につながることで、同国への投資に対する強気の材料にもなっていると考えられる。

一方、資金流入加速の動きは金融当局の警戒を高め、対応に苦慮する当局の姿があることも忘れてはならない。ブラジルは10月に、海外投資家のブラジル債券購入時に課している税率を2倍に引き上げるといった対応策を講じたが、当局の思惑通りに行っていないのが現状だ(※1)。過度に増大する資金流入に対して、政策当局はどう舵取りを取っていくのだろうか。アジア通貨危機など新興国が海外資金の流出入に翻弄された経験を持つことを思い起こせば、世界の投資家は今後、こうした政策対応などの動きも注視しなければならない。

(※1)10月17日時点

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