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「多様性」への対応に見るIFRSの一面

2010年09月28日

池田 太郎

2012年を目途に、国内上場会社に対しIFRS(国際財務報告基準)を連結財務諸表において強制適用するかどうかの検討が進められている。その中で少々気になるのが、「欧米式のルールを押しつけられて、日本企業または日本的経営の良さや強さが失われはしないか」という危惧である。

スポーツの世界でも、例えば、かつて日本のお家芸であったバレーボールやスキーのジャンプ競技、そして柔道などにおいて、国際ルールの変更によって今までの戦い方が封じられ、結果として国際大会で苦戦を強いられる光景を我々は何度も目にしてきたが、IFRS導入でもそれと似たようなことが起こるのではないかという不安を持つことは、ごく自然なことであるようにも思える。

確かに、IFRSは、欧米の意向が強く反映されたものになっているといえるかもしれない。しかし、一方で、国際的に受け入れられやすくするために、各国の法制度、税制、商慣習などを尊重し、これらに対しできるだけ中立的であろうとする姿勢も見られる。「原則主義」を採用するというのも、こうした姿勢の表れであるといえよう。

IFRSを最も早く本格的に導入したEU諸国においては、法制度も税制も商慣習も経営思想も、さらにその前提となる文化も言葉も大きく異なる(日本人は、「欧米」とひとくくりにして考えがちであるが)。このような各国の多様性、独自性を維持することと、投資家にとって各国企業の財務諸表を比較可能なものにすること、という二律背反するニーズにIFRSが応えられるものでなければ、おそらく採用されなかったであろう。こうした考え方により、各国、各企業は、「企業の実態に合致し、財務諸表利用者に企業の状況を適切に示す会計処理を採用し、財務諸表に表示する」という原則の範囲内で、IFRSに柔軟に対応してきたともいわれている。そのため、一方では企業間の比較可能性が必ずしも十分ではないという評価もあるが、各国でバラバラな会計基準を採用していたことを考えれば、大きな進歩であるという見方もあるようだ。

これからIFRSを受け入れる日本及び日本企業にとって、欧州におけるこのようなIFRS受容を参考にし、良さ・強みを殺すことなく、むしろ生かすよう、柔軟に対応していくという途は考えられないだろうか。無論、企業側のみならず、監査人の側にあっても、いままでの「細則主義的思考」から会計基準を理解、適用し、監査上の判断を行うのではなく、「原則主義」にあった対応が求められることになろう。

明治時代の日本は、「黒船」以来、外圧による受身の姿勢から積極的に変革の途を選び、欧米の制度を大胆かつ柔軟に取り入れ、発展を遂げた。外部の環境変化に対応して自らを大変革し、成長する力を日本人は持っていたはずだ。IFRSに対しても、「ChangeはChanceである!」という気持ちで、積極的、かつ柔軟に取り組んでいきたいものである。

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