社会保障関係費を考える

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2010年09月21日

  • 中野 充弘
年金・医療・介護などの社会保障関係費の増加に対する対応策が急務となってきた。まずグラフを参照していただきたい。

社会保障給付費(社会保障制度を通じて国民に給付される金銭・サービスの合計額。年金の受給額や医療の給付額など。)は高齢化社会の進展などによりほぼ一貫して増加している。2010年度は105兆円と見込まれており、今後も毎年1兆円程度のペースでの増加が予想されている。一方、社会保険料収入は当初は給付費と並行して増加していたが、1997年頃からほぼ横ばいとなっており、その結果、収入と支出の差額分を国・地方が税負担する形となっている。

こうした税によるサポートは国の予算にも大きな影響を及ぼしている。2010年度予算において、一般会計92兆円のうち社会保障費は27兆円であり、構成比は29.5%と最大の支出項目である。また前年比でみても2.4兆円増(9.8%増)と厳しい予算の中で国民のニーズに応える形で重点配分された。

しかし際限のない税金投入は財政健全化の観点からは逆行する。わが国の公債残高は1992年度の166兆円から2010年度637兆円まで471兆円増加したが、その要因分析によると、歳出の増加192兆円、税収等の減少169兆円、その他110兆円と分析されている(財務省:「日本の財政関係資料」2010年8月)。さらに192兆円の歳出増加のうち、公共事業関係費は62兆円に過ぎず、社会保障関係費が148兆円と最大要因となっている。しかもこの148兆円のうち114兆円は2001年度以降の直近10年間の寄与である。

言い換えれば、過去20年間で「景気の低迷などによる税収減の影響に加え、社会保障費の拡大により、財政の悪化がすすんだ」といえるだろう。

公債残高637兆円は国民一人当たり500万円に相当し、将来世代の負担増となる。また国の信用が低下した場合には、金利の急上昇という形で日本経済にダメージを与える可能性もある。

もはや税に頼る社会保障制度には限界が見えてきたのではないだろうか。社会保障給付費を抑えるための制度の見直しや関連業務の効率化が急がれる。また保険料負担増なども避けられないのではないか。

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