銀行等保有株式取得機構と銀行の株式保有
2010年09月06日
銀行等保有株式取得機構(以下、「取得機構」)による、2009年度の株式等買取り実績は3,533億円であり、うち株式が3,478億円となった。株式の取得先で分けると、会員(銀行等)の利用が大部分で、会員の株式を保有する会員以外(事業法人等)の利用は限定的だった。月次では、3の倍数月に買取り額が増える傾向が窺われる。
2010年4月まで行われていた日銀の買取り分を合わせ、2009年3月から2010年7月までのフローを整理すると、銀行による市場売却が4,449億円(三市場ベースのネット、以下市場売却は同じ)、取得機構と日銀の買入れ額が8,458億円となる。取得機構等の買取りは、銀行等による市場での売り圧力を相応に軽減したと考えられよう。
業種別では、取得機構による2009年度の取得額(約定ベース)のおよそ半分が「製造業」で約1,800億円、次いで「金融・保険業」が約1,000億円となる。市場の時価総額(東証1部の月末値ベースの09年度平均)との比較では、「金融・保険業」の比率が0.25%と最も高く、「製造業」は0.11%となる。相対的には「金融・保険業」が、次いで「商業」の株式が多く持ち込まれたと言える。
それでは、銀行の株式保有動向はどうなったのだろうか。
東証、大証、名証の1部上場銘柄を対象とすると、2010年3月末時点で、銀行の株式保有残高は14.0兆円で、前年度末の12.4兆円から1.6兆円増加した。両年度のあいだにおける銀行保有株の増減を、09年度の株価騰落率で説明できない部分を売買フローとすると、保有株全体での圧縮額は、1.2兆円から1.7兆円程度と試算できる。
年度をまたぐタイミングで大型合併のあった、保険業と石油・石炭製品は除いた業種別では、最も売却額が大きいと試算されたのは輸送用機器で、銀行業、卸売業と続く。売却が進められたと見られるこれらの業種は、金融関連や製造業、商業などであり、上述した取得機構に持ち込まれた業種と似通っている。08年度末の保有残高との対比を均して見れば、1~2割程度を圧縮した様子である。
業種別にみた、09年度の株価と保有株式の増減等の関係はあいまいである。概ね無相関か、わずかに逆相関となっており、銀行の売買が株価に影響した様子はうかがわれない。取得機構等が受け皿として機能したことや、株価下落につながるような無理な売却は進めていない可能性があろう。だが、株価が軟調な中では無理に売却を進めないとしても、2010年6月の銀行は売り越しで、取得機構への売却も増えた。5月と7月は買い越しで、期末にはやや売りニーズが強まる傾向があると考えられるだろう。今後、動きがあるとすれば、新たな金融規制が明確になってくる11月頃から、売却ペースに変化が出てくるのではないだろうか。
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