宝探しに興じる投資マネー

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2010年09月01日

  • 山田 雪乃
コモディティ市場は8月上旬にかけて米国株の上昇と共に回復したが、米FOMC声明文をきっかけに、米国景気見通しを下方修正する動きが強まり、調整へ転じた。

今後のコモディティ市場を見通すと、10月末頃にかけて調整基調で推移するだろう。コモディティ市場が上昇基調を強めるには、景気回復を足がかりとした需要回復期待が高まってくる必要がある。しかし、金融市場における注目点は米国景気に移っており、同国経済が二番底を回避して回復軌道を辿るか否かが注視されている。しばらく同国経済成長を下方に織り込む局面が続くだろう。米中間選挙(11月2日)にかけて不透明感も残る。

一方、米国のみならず日本でも、追加的な金融緩和政策が発動された。流動性が供給される中、行き場を失ったマネーはコモディティ市場へ流入しやすい。とはいえ、09年3月から4月に、先進国を中心に流動性供給策が打ち出された時のようなコモディティ市場の急騰は期待し難い。リーマン・ショック後は、在庫の大幅調整と世界経済の急激な収縮が進んだところへ流動性相場が形成されたため、これらが逆回転し、コモディティ需要の回復期待が一気に強まった。

しかし、現局面では米景気回復に不透明感が広がり、在庫水準もすでに回復している。追加的に資金が供給されても、楽観的な景況感が戻ってくるまでは、景気敏感な原油や非鉄金属に資金は流入しにくいだろう。一部の需給が逼迫したコモディティが、選別されることになるだろう。

最も注目しているコモディティは、金である。新興国では、景気回復と共に宝飾品需要が回復し始めている。投資家の需要増も引き続き見込まれる。米ドルの供給増はドルの価値低下をもたらし、インフレ懸念を連想させる。「質への逃避」に加えて、インフレヘッジとしての投資の動きが、金価格の一層の上昇を後押しするだろう。

この他、コモディティの選別基準として「供給要因」の決定力が大きい。リスク回避傾向が強まった10年春先以降では、供給不足懸念を背景に、コーヒーや小麦、砂糖、綿花が上昇した。今後の注目材料は、ラニーニャ現象である。ラニーニャ現象は10年7月に発生し、11年年明けまで続く見通しだ。想定外の天候不良になれば、農産物やエネルギーの需給が逼迫するだろう。

10年年末から11年春先にかけた市場を見通すと、コモディティ市場は10月頃までの調整局面から一転して緩やかな上昇基調で推移するだろう。11月の米中間選挙で共和党が議席を伸ばし、景気対策が発動されるとの見方が強まってくれば、コモディティ市場は需要回復を織り込む上昇局面へシフトする見通しだ。

SPDR金ETF
出所:SPDRよりDIR作成

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