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イスラム金融に見る日本の戦略性の欠如

2010年08月31日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

数年前に日本ではイスラム金融が大きな話題となった。巨大化するオイルマネーとの関係に加えて、金利を認めないことや豚肉・アルコール等関連には投融資しない点など、その特異性を強調する例も多く見られた。しかし最近、日本の新聞や雑誌等でイスラム金融の話題を耳にする機会は随分と減ったように思う。世界でも日本と同じようにイスラム金融に対する熱は収まってしまったのだろうか。

実は金融危機以降、世界ではあちこちでイスラム金融に対する期待が高まり、自国内にイスラム金融を呼び込もうとする戦略的な動きが非イスラム諸国も巻き込んで活発化しているのである。その理由は、英国やシンガポールをはじめとして、世界もしくは地域の国際金融センターにはイスラム金融が不可欠と考えていることや、韓国のようにオイルマネーの国内流入のためイスラム金融が注目されていることがある。さらにフランスのように、今般の金融危機を受けて、実体的な裏付けのある取引を重視するイスラム金融を前向きに評価する国もあるし、中にはロシアのように資源に偏る国では、産業構造の多様化のために新しい産業としてイスラム金融に目を付けるという例もある。

 翻って日本はどうか。日本では数年前にイスラム金融への関心が高まったこともあり、マレーシアにあるイスラム金融の国際機関IFSB(イスラム金融サービス委員会)の会員数は、日本が非イスラム諸国で最も多いという事実がある。しかし国の政策としてイスラム金融の位置付けは、非常に曖昧である。確かに2008年12月に銀行法施行規則が改正され、銀行等の子会社・兄弟会社によるイスラム金融業務が認められたが、銀行本体がイスラム金融業務を行うことは出来ないし、国内における税制面での取り扱いはいまだに不透明である(注)。ブームに乗って一時は日本中がイスラム金融に関心を示したが、今ではそれが中途半端なままに放置されている印象を受ける。

こうした点は何もイスラム金融に限らない。日本では政策がパッチワーク的に作りあげられることが多く、全体の戦略から個々の政策が導き出されるということがあまりないように思う。そのために政策間の整合性が欠けてしまいがちとなる。もちろん、足元の問題を政策に反映させていく姿勢は重要である。しかし現在の日本では、中長期的なビジョンに基づいて必要な政策を取捨選択するという戦略的姿勢の方がより重要と考えられる。日本が直面するグローバル化や少子高齢社会はもはや変えられない現実である。こうした現実を前提にして、イスラム金融も含めた個々の政策が全体の戦略の中でどのように位置付けられるかを、今後は明確にしていく必要があると思われる。

(注)金融庁は8月30日に発表した2011年度の税制改正要望で、国内企業が発行するイスラム債(スクーク)の配当の非課税化を求めている。

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