TOB、MBO最新事情
2010年08月30日
TOBとは、一般には不特定多数の株主から株式を買い集めることをいい、英語の「Takeover Bit」を語源とする言葉で、「株式公開買付け」を指す。
今回、パナソニックと日清製粉グループ本社の2つの大企業グループが同日に上場子会社2社のTOBと、その後に株式交換等を行う、いわゆる「二段階買収」により完全子会社化を目指していることを発表した。2月には三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを完全子会社化するためのTOBを行っている。
経営環境がますます厳しくなる中、グループ内の経営資源配分の効率化、少数株主を排除することで機動的なグループ経営を行うことができ、かつ、グループ経営の強化という点から、スピーディな選択と集中の実行が求められている。
今後は、コーポレート・ガバナンスの視点からも、子会社上場戦略に関して、決断を迫られる場面も出てこよう。TOBにおいては、子会社上場の見直しがなされる企業グループが注視されることが考えられる。
また、MBOとは、会社の経営陣が株主から株式を買い集めることをいい、英語の「Management Buyout」を語源とする。株式を買い集めるという点でいえば、MBOはTOBの一類型である。わが国における最近の現象面からすれば、経営陣=オーナー家による自社株式の買収による非上場化を選択するケースが増えつつある。
上場会社のメリットとしては、(1)知名度・ブランド力のアップ、(2)資金調達の多様化、(3)信用力の向上などあげられる。その一方で、デメリットとしては、(1)上場維持のためのコスト負担増、(2)敵対的買収リスク、(3)株価変動リスクなどある。
最近では、東京美装興業、日清医療食品などと相次いでMBOを発表している。MBOは上場会社のメリット・デメリットを比較して、非上場化にメリットを見出した結果であるといえる。
景気や株価が低迷し、長期金利も1%を割り込む状況において、MBOを選択する会社が、今後とも少なからず現れることが予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日