待機児童解消の妙案

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2010年08月05日

  • 原田 泰
子ども手当などは見識のないバラマキで、育児支援は保育所の増設など実物給付で行うべきだというインテリが多いようだが、育児支援は子ども手当以上のバラマキである。

保育所でこども一人預かるコストは月20万円である。保育料は月3万円程度のものであるから、子どもを預けている家計には月17万円のバラマキをしていることになる。ついでに言えば、月6万5000円の国民年金の半分は税金で賄われているのだから、国は高齢者には6万5000円の半分の月3万2500円のバラマキをしていることになる。

なぜ子どもに月2万6000円をばら撒くことが悪くて、高齢者に3万2500円ばら撒くことが良いのか、私にはまったく理解できない。私の考えるところ、国民年金のバラマキが問題にならず、子ども手当がバラマキだと非難されるのは、人は誰でも歳を取るが、子どもや孫を持つ人は小数派だからだと思う。これでは、日本は子どもが生まれず、高齢化が進むばかりだ。

さて話を子ども手当と保育所の問題に戻すと、子ども手当にも保育所の増設にも巨額の税金がかかる。月20万円のコストがかかるサービスを3万円で提供すれば、いくらでも需要が増えるだろう。待機児童は永遠に解消できない。需要を抑えるためには、保育料を上げるしかない。いくら上げたら良いかというと1万2000円上げて4万2000円にすれば待機児童は解消できるという(清水谷諭・野口晴子『介護・保育サービス市場の経済分析』東洋経済新報社、第5章)。

だが、保育料を1万2000円上げるだけでは大反対となるだろう。ここで子ども手当の出番がある。2万6000円の子ども手当を支給して(すでに実現した1万3000円分だけでも良い)保育料を4万2000円に上げれば良い。待機児童は解消しているから、子どもを預けたい家計はいつでも子どもを預けることができる。子どもを預ける家計は働いて所得が増える。子どもを預けない家計は子ども手当で所得が増えている。誰もが得して待機児童も解消できる妙案と思うのだが。

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