日本人は本当に外国語下手なのか

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2010年07月15日

  • 川村 雄介
日本人の語学下手は世界でも有名だという。私自身も若い頃に米国留学を経験したのに、いまや会話は中学生レベル以下のような気がして恥ずかしい思いをしている。

中学校以降長きにわたって英語を学んでいるにもかかわらず、簡単な日常会話すらできないのはどうしてなのだろうか。

遠い昔には、難解な仏典や律令を見事に日本語化した人々、一歩も日本国外に出たことがないのに欧米語で厄介な外交交渉をこなした通詞たちがいた。明治維新後、民法典起草のために渡仏した日本人留学生たちは、フランスの難関大学で成績上位を独占したという。こんな人々は例外的な天才だ、という向きもあろう。それではかつてアジアに渡った多くの日本人大衆はどうだったか。北京語と広東語、さらには福建語まで使いこなす日本人も少なくなかった。中国育ちの女優、山口淑子さんに中国語の方言矯正指導をしていたのは日本人だったそうである。私たちの父祖の世代までは外国語が巧みだったのに、あわれ現在の日本人はそのDNAを受け継がなかったのか。

原因は簡単なところにある。日常使わないからだ。学生たちは、優秀な先人たちが海外の主要文献等を巧みに日本語化してくれたから、勉強に際して外国語を使用する必要性が低かった。社会人になっても一部の職場を除いて外国語なしで困ることはまずなかった。大半の日本人にとって外国語は教養か趣味の領域のものと相成った。日々の生活の必需品ではなかったのだ。これで外国語が身に付いていたらむしろ不思議である。

となれば答えは簡単だ。毎日必ず外国語を使わざるを得なくすればよい。今や、日本人も地球市民の一員であり、少なくとも英語か中国語を使いこなせなければグローバル時代を生き抜くことはできない。国際会議で日本の閣僚だけが会話の輪から外れているようでは、大切な国家交渉もままなるまい。日本の金融・資本市場の国際化が進まない大きな原因のひとつが、日本語という言語の壁であることは常識となっている。

毎日の情報収集や職場の会議、打ち合わせなどでは、必ず一定の頻度で外国語を使用すべきだろう。要は外国語の使用を習慣化することだ。最近、会議を英語で、という企業が増加しているが当然の決断だと思う。

外国語に触れる機会など稀だった大昔でも、私たちの先祖は必要に迫られて外国語を駆使していた。昨今のように便利な携帯AV機器に恵まれ、溢れる外国語環境に暮らす現代人にできないはずがない。サッカーのワールドカップで活躍したある日本人選手は、毎日3か国語の特訓を欠かさないそうである。

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