新成長戦略とイノベーション
2010年06月28日
政府は、6月18日、10年後の2020年を見据えた「新成長戦略」を閣議決定した。
「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野とし、これらを支える「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」に対しても強い経済を実現するための戦略を実施していく。革新的な科学技術や画期的なアイデアから新産業を生み出すイノベーションについては、環境・エネルギーのグリーン分野と医療・健康に関するライフ分野が経済成長をリードする両輪になる計画である。
グリーン分野では、再生可能エネルギーの開発および普及、低炭素型ライフスタイルの推進、次世代の蓄電池や自動車の開発、火力発電所の効率化などをイノベーション実現の軸にしていく。50兆円超の新規市場と140万人の新規雇用を創出することを2020年までの目標にする。温室効果ガスの削減に世界レベルで貢献することも狙う。
一方、ライフ分野では、医療・介護・健康関連産業の成長推進、日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発、バリアフリー住宅の供給促進などを通じて、健康大国の実現を目指す。医療・介護・健康関連サービスで、需要に見合った産業育成と雇用創出を目標にしていく。2020年までに45兆円超の新規市場と280万人の新規雇用を創出することを見込む。
イノベーションの有力な担い手として、事業化を実行するベンチャー企業がある。日本ベンチャーキャピタル協会の調査によると、グリーン、ライフ関連分野に対するベンチャーキャピタルの投資額はそれぞれ約21億円、約58億円(2009年)。米国での投資額と比べると、両分野とも百分の一程度の水準に過ぎない。今後、日本でも、画期的な技術シーズと有能な人材を備えた新興企業に対するベンチャーキャピタル投資が増加することで、世界市場をリードするようなベンチャー企業が続出することが望まれる。
ベンチャー創出を含めて、科学技術の具現化がイノベーションの成否を決めるカギとなろう。画期的な発明や発見を実現させることとともに、それらを製品やサービスに仕上げて、その効用を広く社会に普及させることも重要になる。科学技術をイノベーションにつなげる具体的な出口戦略の実践が待たれる。
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