留学先が映す構造変化
2010年05月12日
英会話大手のジオスが4月21日に破産手続きを開始したと発表した。同業のNOVAも経営破綻しており、英会話学校には以前ほど生徒が集まらなくなっているようである。
英会話学校の相次ぐ破綻の背景には、新聞報道などでも伝えられているように、日本人留学生の米国離れがあるのかもしれない。文部科学省が設置する中央教育審議会によると、米国への日本人留学生は、1994年には42,843名であり、全日本人留学生の78%を占めていた。しかし、この数は、2006年に35,282名まで減少し、全日本人留学生に占める割合も46%まで下落している。米国Institute of International Educationが発表したレポート「Open Doors 2009」でも、2008~2009年の学期において、米国における日本人留学生数は29,264名となり、前年同期比13. 9%減少している。
米国に代わって、日本人留学生が増加しているのは中国である。中央教育審議会によると、中国への日本人留学生数は、1994年が5,055名で全日本人留学生の9.2%であったのに対し、2006年には18,363名と全日本人留学生の24%を占めるまでに増加している。
この背景には、経済成長に伴う中国の国際社会でのプレゼンス増大があるのは言うまでもない。中国を始めとした新興国市場が大きくなる一方、金融危機に陥ったアメリカ経済が落ち込み、相対的に存在感が薄くなった。日本の貿易相手国も、2008年にはアメリカを抜いて中国がトップとなっており、ビジネスパートナーとして中国の存在感が増していることは否定できない。ビジネスの世界でアメリカの比重低下が進めば、留学生の留学先にも影響が出るのは自然のことだろう。
また、中国への留学費用は米国に比べると、格段の割安感がある。米国College Boardの調査「Trends in College Pricing 2009」によれば、米国の4年制大学の年間授業料の平均は、公立大学で17,460ドル、私立大学は25,177ドルとなっている。一方、北京の日本大使館ホームページのデータによれば、中国の4年制大学の年間授業料は、公立が5,450ドル、私立大学が8,800ドルとなっている。
留学生にしてみれば、今更アメリカに留学しても就職で特に有利になるわけでもなく、MBA(経営管理学修士)をとっても、(かつては高い人気を誇った)欧米資本の外資系企業に就職できる程度では動機付けとしては弱い。費用対効果の面でも、中国への留学が魅力を増しているのだろう。
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