中国の台湾企業

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2010年04月19日

  • 杉下 亮太
90年代以降、台湾政府の段階的な規制緩和とともに多くの台湾企業が中国での生産を開始し、中国の近年の輸出増加に貢献してきたことはよく知られている。実際、中国の企業別輸出金額ランキングをみると、首位は世界最大のEMS企業である鴻海(Hon Hai)の子会社で、その他にも上位にはPCメーカーの中国子会社など台湾系企業が多く顔を出している。輸出金額ランキング上位100社のうち、台湾系企業の構成比は金額ベースで4割に達する。

このような大手台湾系輸出企業はいずれも電子産業のOEM/ODM企業か部品メーカーである。これに対して電子産業以外では、中国からの輸出ではなく、中国国内の消費ブームに乗って躍進を遂げている台湾系企業がある。代表格は、インスタント麺で中国最大手の地位を獲得した康師傅(Tingyi)だろう。康師傅の中国市場におけるインスタント麺のシェアは数量ベースで約4割と見られており、飲料(ペットボトル入りのお茶や水)でも近年は大きなシェアを獲得した。09年の同社の売上高はUS$5bn(約4,700億円)に達している。せんべいメーカーとして知られる旺旺(Want Want)も本業のせんべいとともに牛乳などの飲料事業が急拡大を遂げており、09年の売上高はUS$1.7bn(約1,600億円)を記録した。

また、小売・外食業界においても成功を収めている台湾系企業がある。中国連鎖経営協会の集計によれば、ハイパーマーケットの大潤発(RT-Mart)は09年の売上高がRMB 40bn(約5,500億円)に達し、カルフール中国の売上(RMB 37bn)を上回ったとされている。コーヒーショップの85度Cは03年に台湾で設立されたコーヒーショップチェーンで、中国進出は07年に開始したばかりだが、すでに上海を中心に110店舗を展開するようになっている。

日本企業にとって中国の消費市場への注目は高まる一方である。日本で中国市場のことが報道されない日はないといってもよい。しかし、中国消費市場拡大の波にうまく乗れずにいる日本企業は少なくないようだ。ビジネス慣習の違いや中国市場への理解不足など苦戦には様々な理由があるだろう。多様性に富む中国消費市場において成功するための解は一つではないが、日本企業にとっては台湾企業を参考にするのも一案ではないだろうか。中国市場で急成長を遂げた台湾企業の例を見ていると、日本企業もやり方次第では成功できることを示唆しているのではないかと思う。

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