大学法人(医歯系除く)の平成20年度決算数値のポイント

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2010年04月07日

  • 内藤 武史

日本私立学校振興・共済事業団による『平成21年度版 今日の私学財政(大学・短期大学編)』によると、平成20年度の大学法人(医歯系除く)の決算は帰属収入が前年度比2.4%減少する一方、消費支出は前年度比5.1%増となり、いわゆるサブプライム・ショックの影響が大きく反映される結果となった。まず、消費支出面では有価証券処分差額・有価証券評価差額の大幅計上により資産処分差額が前年度の618億円から1,940億円へと1,322億円もの記録的増加となり、管理経費もデリバティブ等の運用関連損を中心に356億円増加した。一方、帰属収入面では受取利息・配当金収入が192億円、資産売却差額が346億円減少した。これら4要因でマイナス効果は2,216億円に達し、さらに寄付金が前年度より232億円減少したことも加わり、帰属収支差額は65億円まで激減した。

帰属収支差額と資産処分差額

もっともこうした特殊要因がなければ帰属収支差額は2,281億円(=65億円+2,216億円)となっていたわけなのだが、それでも前年度の2,612億円と比較すると331億円減少したことになる。このことから帰属収支差額の減少傾向に歯止めはかかっていないことが判明し、その要因はコアな部分に求められる。すなわち学生生徒等納付金が前年度より148億円減少する一方、人件費が36億円、教育研究経費が188億円それぞれ増加し、3要因で372億円のマイナス効果となったのである。中でも学生生徒等納付金がはじめて前年度より減少したことが一段と目を引く。

主要指標をみてみると、企業の使用総資本事業利益率(ROA)に該当する「{(学校事業収入-学校事業支出)+事業外収入}/総資産」は前年度の2.0%から1.2%へ、売上高営業利益率に該当する「(学校事業収入-学校事業支出)/学校事業収入」は同3.0%から0.2%へ、「帰属収支差額比率=帰属収支差額/帰属収入」は同7.4%から0.2%へというように代表的な指標はいずれも急落した。一方、「人件費比率=人件費/帰属収入」 は52.8%、「人件費依存率=人件費/学生生徒等納付金」 は72.3%、「教育研究経費比率=教育研究経費/帰属収入」は31.0%、「管理経費比率=管理経費/帰属収入」は9.9%といずれも平成10年度以降で最も高くなった。

平成21年度は20年度のような特殊要因がなくなるため、帰属収支差額は回復すると予測されるものの、上述のような収支状況を勘案すると19年度を上回るのは困難だろう。大学経営は大きな転換点を迎えているといえそうだ。

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