世界を変える4つのメガトレンド

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2010年03月25日

  • 木村 浩一
ジョージ・メイソン大学のゴールドストーン教授が、「フォーリン・アフェアーズ」(2010年No1)に寄稿した論文「世界を変える四つの人口メガトレンズ」によると、世界の人口は、2010年の69億人から2050年には91億人に増加する(国連の人口推計2008年版の中位推計)。そして、世界の人口が増加することよりも、今後40年の間に起きる世界の人口構成の次の4つの歴史的変化が、21世紀の世界を大きく変えていくと言う。それは、(1)先進国経済の地盤沈下と途上国への経済パワーのシフト、(2)中国を含む先進国の高齢化、(3)イスラム諸国の人口増加、(4)途上国の急速な都市化、である。

そして、教授は、第二次世界大戦後の冷戦期、世界は欧米民主主義国家の第1世界、共産主義国家の第2世界、途上国の第3世界に分かれていたが、今後の人口の年齢構成と人口分布をめぐる世界的な偏在により、新たに3つの世界に分かれていくだろうと分析している。

第1世界は、北米、ヨーロッパ、アジア・太平洋地域などの先進国。第2世界は、急成長を遂げ経済的にもダイナミックで、バランスのとれた人口をもつブラジル、ベトナムなどの諸国。第3世界は、人口が急成長し、若者が多く、都市化も進むが、経済も政治も不備が多い国々。そして、教授は、第2世界が、国際経済、安全保障、国際協調の中心になっていくと予想している。

2008年の世界的金融危機によって生じた先進国の後退と中国、インド、ブラジルなどの新興国の地位向上は、一過性のものではない。日本経済はバブル崩壊後、失われた20年を経て、前進が止まり過去の遺産をくいつぶす社会になりつつある。また、アメリカ、ヨーロッパ諸国も、リーマン・ショック後の財政赤字と、新しい第2世界からの低コストの供給力増加により、バブル崩壊後の日本と同じ失われた10年をたどろうとしている。

世界がダイナミックに変化しようとしている中で、日本は萎縮し、立ち止まったままでいる。第2世界への経済パワーのシフト、世界の高齢化への対応、困難を抱えるイスラム諸国などへの協力など、4つのメガトレンドという新たな現実に主体的に取り組んでいかない限り、日本の将来はないだろう。

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