予算の欲しい人は国民に直接訴えるべき
2010年03月01日
多くの人が、政府は必要な支出の手当をしていないと非難している。教育関係者は、GDPに対する公的教育費の割合が、OECD平均で5.0%であるのに、日本が3.4%でしかないことを非難する。科学者は、GDPに占める政府負担の科学研究費が、フランス0.81%、アメリカ0.74%、ドイツ0.70%であるのに、日本が0.64%であることを批判する。あるいは、長らく世界一の座にあった政府開発援助の支出額が減少するのは残念だという人もいる。そしてもちろん、日本の防衛費の対GDP比は1%以下で、他の国比べて格段に低い。
日本にも、先進工業国よりもより多くのお金を使っている分野もある。小泉政権下で減少はしてきたが、例えば、公共事業(公的資本形成)の対GDPはアメリカの2.6%、イギリスの1.8%、ドイツの1.5%に対して、日本はまだ3.0%ある。
他の国より予算を使っている分野は黙っており、使っていない分野は声を上げる。すると、日本はいかにも予算が不十分な国に見える。しかし、そもそも、日本の税・社会保険料負担はGDPの40.0%でアメリカの34.7%よりは高いが、デンマークの70.9%、スウェーデンの66.2%はともかく、フランスの62.4%、ドイツの52.0%、イギリスの49.2%よりずっと低い。
OECDの平均が、ざっとオランダの53.5%であるから、日本は平均の4分の3(40.0÷53.5)の収入しかない。そもそも、収入がOECD平均の4分の3しかないのに、ヨーロッパなみの福祉国家、アメリカなみの科学技術大国を目指そうとすることに無理がある。アメリカのGDPは日本の3倍なのだから、税・社会保険料負担の対GDP比が日本より小さくても、より多くの研究開発支出を公的に負担できる。さらに言えば、中国のGDPは日本とほぼ同じで、人口は10倍である。中国の研究者が日本より多くなり、科学研究費も大きくなるのは避けられないだろう。
他の先進国なみの予算が欲しい人は、財政当局に要求するのではなくて、国民に対して税金を上げて自分たちに配って欲しいと訴えるべきだ。
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