日本でタブレット型PCが普及する市場は?

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2010年02月18日

  • 八木 昭彦
2010年1月27日(米国時間)、アップルよりタブレット型コンピュータ「iPad」が発表された(発売は3月末から)。この端末は9.7インチのタッチパネル式ディスプレーを搭載し、インターネットや文書編集など基本的なパソコンとしての機能を備える。また、スマートフォンのiPhone向けアプリケーションが動くことも特徴だ。そして、最大の目玉は電子書籍機能であろう。アップルはこの端末の投入と同時に電子書籍マーケットの立ち上げも予定しており、この市場で先行するアマゾンの追撃を目論んでいる。

では、この製品は日本市場で受け入れられるだろうか?筆者の予想は、iPhoneほどのインパクトはもたらさないのでは、というものだ。パソコンとスマートフォンの間の中途半端なデバイスという印象を受ける。iPhoneのアプリケーションを大画面で動かしたいというニーズがどれだけあるのか。そして、日本の伝統的な書籍流通市場の中で、魅力的な電子書籍市場が生み出されるのか。米国のように発売間もない書籍が、安価で手に入るような市場が形成されない限りは、一般的な電子書籍端末としても普及は難しいだろう。

そんなiPadを教育の現場で活用しようとする動きがある。電子教科書としての活用である。一部の報道によると、米国の大手教科書出版会社が、既にiPad向けの教科書作成に向けて動いているようだ(※1)。元来、アップルは世界的な教育市場に強いといわれており、これは自然な流れかもしれない。

電子教科書については、日本でも原口一博総務大臣が2009年12月に打ち出した「原口ビジョン」の中で、2015年までの小中学校全生徒への配備を掲げている。電子化によって、音声や動画などを用いた、直感的で分かりやすい教科書になる。例えば理科であれば、動物の生態や天体の様子などを動画で見て、いつでも復習することができるのだ。また、生徒の習熟度に合わせて、出題や解説などの難易度を変えるといった柔軟性も期待できる。子供達の理解や関心も深まるはずだ。

電子教科書としてiPadを見てみると、文章や動画の閲覧には十分な性能を持っており、およそB5サイズで机上での場所もとらない。また、カラフルな画面を触ることで簡単に操作ができるので、子供達にとって親しみやすい教科書になる。iPadはこの分野に適したデバイスといえそうだ。日本の教室でも活用できる可能性は大いにあるだろう。

もちろん、小中学校全生徒への普及を考えると、現状の499ドル(最安値モデル)というコストは無視できない。そのためには、機能を制限して価格を抑えた「教育特化型iPad」のようなデバイスの登場を待つことが現実的かもしれない。現状では、まず通信教育などでの活用例が出て来るのではなかろうか。

それ以外の課題としては、「紙」と同様の使い勝手をどのように確保するかであろう。具体的には、ペンやマーカーなどを使った書き込みや、長時間見ていても疲れない画面といった機能が挙げられる。本格的な普及、そして子供達の目を守るためには、動画対応のカラー電子ペーパーを搭載した目に優しい端末の実現が欠かせないだろう。

(※1)Wall Street Journal (2010年2月2日付け)”Textbook Firms Ink E-Deals For iPad
(関連)情報技術研究所IT TIME ”タブレットPCの特徴を、アラン・ケイの「ダイナブック構想」と重ねてみる”

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