世界第2位にどんな意味がある?
2010年02月17日
15日に内閣府が公表した10-12月期のGDP統計を受けて、あるメディアが流したニュースの見出しは、「日本のGDPは中国を抑え2009年に世界第2位を維持」であった。同様な見出しを掲げた記事はいくつも見られた。10-12月期のGDP成長率がもう少し低ければ、あるいは期中の為替レートがもっと円安方向に振れていれば、見出しは「日本は中国に抜かれて第3位に転落」となっていたはずだ。穿った見方をすれば、今はそんな風に書きたい人が多いのかもしれない。
しかし、GDPの規模が何位であるかにどれほどの意味があるだろうか。おりしもバンクーバー・オリンピックが開催されている最中だが、世界第2位へのこだわりは、メダルの色が銅よりも銀のほうが誇らしいと感じる気分と似ていなくもない。
日本のGDPが世界第2位になったのは、太平洋戦争後、奇跡的な戦後復興を遂げ、高度成長を実現し欧州の先進国を抜き去った1960年代末のことである。以来、約40年にわたって、米国に次ぐ第2位という言葉が、漠然と日本の経済力や日本人の豊かさを象徴する表現として使われてきた。海外のメディアも「世界第2位の経済大国、日本は・・・」という表現をよく使ってきたから、日本の世界経済の中での立ち位置をこれほど簡潔かつ便利に表わしてくれる表現はなかったのだろう。
しかし、言うまでもなく人口が加速的に減少してゆく日本のGDP規模が中国に抜かれるのは必然で、それよりも重要なのは一人当たりGDPがどのように成長していけるかどうかということだ。一人当たりで見た場合、日本の停滞が明らかで、90年代の初めに世界でトップクラスだった日本の一人当たりGDPは、近年、先進国の中でも下位に位置する。GDP規模で中国に抜かれることよりも、このことのほうがずっと深刻な日本の現状を映し出している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ランサム攻撃を巡る動向:脅威インテリジェンス
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月11日
-
人的資本経営におけるエンゲージメントの重要性
エンゲージメント調査の調査項目の留意点について
2024年10月11日
-
拡大するランサム攻撃による被害:平時の対策と有事の対応方法
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月10日
-
「東海」「四国」など7地域で改善~石破新政権や海外情勢の動向も注視
2024年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2024年10月09日
-
「未婚男性は極端に短命」というのは誤り~未婚男性にとっても「年金の繰り下げ」は有用
2024年10月11日