もうひとつのM&A(グループ再編)
2010年01月18日
現在、自動車産業や電機産業を中心に、傘下に多くの子会社・関連会社を抱えた企業グループを形成している大企業が少なくない。まさに企業経営において、グループ戦略の確立が不可欠となってきている。
グループ戦略を考える上で重要な点は、(1)親会社のグリップ力と、(2)グループ会社の自立性をどのようにバランスをとるのかということに尽きる。いわゆる求心力と遠心力のバランスである。筆者としては、他社との合弁会社は別として、親会社の事業との関連性が強く、事業の様々な面で連携しているグループ会社は、積極的に100%化すべきであると考える。実際に子会社の完全子会社化、あるいは子会社との合併が増えているようにも感じられる。一方で、その中には、足元の経済環境から業績不振に陥ったグループ会社を救済するための、消極的なグループ再編も少なからずあるものと推察される。
とはいえ、グループ連結収益力の向上が投資家から評価されるような環境で、グループ会社に少数株主がいる場合、それに配慮した経営を行わなければならない(グループ経営の自由度を阻害する)という観点から、積極的なグループ再編については、一段落することはあっても、大きく減ることはないと思われる。
子会社の上場問題もグループ再編に拍車をかけている。株式上場は確かに、会社の知名度が上昇し、役職員の士気向上や資金調達などの面でメリットがある。しかしながら、子会社公開は、コーポレート・ガバナンス上や、利益相反などの面で望ましくないという状況となっている。
2002年に松下電器産業(現パナソニック)が上場グループ会社5社を完全子会社化し、ソニーも同様な形で上場グループ会社を完全子会社化したことは記憶に新しい。また、昨年から今年にかけて、日立国際電気、日立工機にはじまった、日立製作所グループにおけるグループ再編は、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービス、日立プラントテクノロジー、日立マクセルまで広がり、上場グループ会社の完全子会社化を積極的に進めている。
今年も上場子会社の合併・完全子会社化や、完全に自立化するのか、という動きには引き続き注目したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日