2010年度予算をいくらにすればよいのか?
2009年12月02日
景気の二番底懸念に加えて日本株の独歩安や急激な円高もあり、2009年度の2次補正予算の必要性と規模について様々に議論されている。また、厳しい税収減の実態が明らかになるにつれて、10年度予算の望ましい規模と国債発行額の見通しがマクロ政策運営の観点から話題である。
なにしろ、麻生太郎内閣で当初予算に1次補正予算が追加された結果、09年度の一般会計歳出は102.5兆円と巨額である。さらに、景気対策として2度の補正予算が編成された08年度から4.5兆円が09年度に繰り越されており、09年度の予算のパイは107.0兆円に達している。そのため、09年度2次補正と10年度当初を合わせて大規模な予算を確保しないと前年度対比でデフレ予算になってしまい、需要不足が深刻化するという声がある。
しかし、そもそも、見た目が異例の規模である09年度予算は、地方自治体も含めてどれだけ執行されているのだろうか。先日発表された09年7-9月期のGDP速報では、公共投資が4-6月期と比べて、名目額にしろ実質額にしろ減少したことが明らかとなった。政府消費支出は7-9月期に少し増えたが、4‐6月期での減少を埋めた程度である。
民主党中心の現政権が09年度1次補正の執行停止等2.9兆円を正式に決めたのは10月中旬のことだから、その影響は秋以降でているだろう。また、それ以前から、政策運営の先行きが見えにくくなる中で、予算があっても行政の現場で支出を躊躇するということはないのだろうか。最近では、「事業仕分け」による歳出抑制の方針がマスコミをにぎわせている。
09年度の予算が十分に巨額であり、09年度2次補正が1次補正の執行停止分と同額程度以上だとすると、事業が終了せずに09年度から10年度へ繰り越される予算は相当の金額(仮に08年度と同程度の繰越率だと5.3兆円)になるだろう。また、潤沢な09年度予算の一部が執行も繰越もされず、不用として税収不足の穴埋めに使われたり、剰余金として10年度予算の歳入とされたりする可能性もある。
いずれにせよ、これまで国と地方の全体で公共部門からどれだけ支出されたか、今後どれだけ支出されるかによって09年度の公的需要の水準(10年度からみたときの発射台)は大きく違ってくる。その検証や見通しなしに、概算要求額からいくら圧縮されるかというだけでは、10年度予算がデフレ的か景気刺激的かは評価できない。
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調査本部
常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準
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