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利用者・読者目線のJ-SOXに

2009年11月19日

経営コンサルティング部 主席コンサルタント 弘中 秀之

内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)に基づく内部統制報告書の開示が2009年3月末決算の上場会社より始まり、4ヶ月余りが経過した。(注1)

2009年10月末までに内部統制報告書を開示した約2,900社のうち、経営者の評価において「重要な欠陥があり内部統制が有効でない」とした会社が68社、「重要な評価手続が実施できず、評価結果を表明できない」とした会社が9社という状況である。

この社数については、世間で騒がれた割には少ないのではないか、いや、各社の努力の賜物であるなど多様な意見があるが、企業における内部統制が充実したのは事実であり、内部統制構築の過程で不正が発覚したという効果も出てきているようである。

内部統制報告制度が制定された背景は、有価証券報告書の開示内容等をめぐり不適正な事例が発生し、ディスクロージャーの信頼性を確保するために内部統制の充実を図る必要があったというものである。この原点に立ち返ると、財務報告に係る内部統制の充実という点では一定の効果が出始めているが、一方で、内部統制報告制度自体におけるディスクロージャーや、情報利用者の立場にたった分かりやすさについては、改善の余地があると考える。

例えば、内部統制報告書の「評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項」や内部統制監査報告書の記載内容を見ると、とても読みにくく、内容を理解するのが難しい。理解するために、本制度の実務上の指針となっている「実施基準」(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)を見ても、さらに理解が難しく、読みこなすのは非常に大変である。

先日傍聴する機会を得た、「第1回 内部統制報告制度ラウンドテーブル」(日本内部統制研究学会、日本公認会計士協会共催 議長:八田進二内部統制研究学会常務理事)(注2)の議論の中では、「日本を代表する日刊紙にさえ間違った認識に基づく表現があった」、「制度の内容を正しく理解してもらうためにはもう少し啓蒙する努力も必要だ」というような意見も出ていた。

私も、もっと理解促進を図るべきであると考えるが、加えて、開示資料や指針等に関し、理解されやすい打ち出し方をする工夫が必要ではないかと考える。

関係各所の多大な労力を掛け、ここまで完成した内部統制報告制度の認知度やプレゼンスをさらに高め、有意義な制度として確立するためには、本制度自体のディスクロージャーについて、一般投資家や情報利用者の視点、誤解を恐れずに言い換えると、読者目線で改善することも一考ではないか。

(注1)2009年3月末決算の会社の内部統制報告書提出期限は、3ヶ月後の6月末
(注2)開催の主旨は、内部統制報告制度に関して、独立的な立場から「総括と提言」を行うというもの。企業、監査法人、市場関係者等から、監査報酬やコスト(に見合った効果)、トップや会社ぐるみへの不正に対する有効性、紙媒体での証跡の保存の必要性、「重要な欠陥」の表現が与える影響、IFRS(国際財務報告基準)への対応等々の幅広い議論や提言があり、今後「総括と提言」にまとめられる予定。

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弘中 秀之

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