独占禁止法に思う
2009年11月09日
今年(2009年)6月に成立し、公布された改正独占禁止法が、来年(2010年)1月1日から施行されることが決まった(なお、一部は先立って7月から施行されている)。この改正独占禁止法は、(1)課徴金制度等の見直し、(2)不当な取引制限等の罪に対する懲役刑の引上げ、(3)企業結合規制の見直し、などの改正が含まれている。
この(1)課徴金制度等の見直しの中には、課徴金の適用範囲の拡大などが含まれている。排除型私的独占や、一定の優越的地位の濫用とか不当廉売等の不公正な取引方法も課徴金の対象となるとされた。排除型私的独占は、カルテルなどに比べて違法かどうかの判断が難しいため、事業活動を過度に萎縮させるとの懸念があった。そこで、公正取引委員会は、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」というガイドラインを作成し、公表した。課徴金の対象となる優越的地位の濫用や不当廉売等の不公正な取引方法についても、程度の差があろうが同様な問題があり、違法かどうかの判断基準をより明確にするため、ガイドラインなり、Q&Aなどの公表が、公正取引委員会に要望されているところである。また、これらは一度作られたから終わりというものでもないだろう。今後の経済・社会の変動や、新しい事例の出現にあわせて、必要に応じて改訂されることも望まれる。
次に(3)企業結合規制の見直しの中には、株式取得の事前届出制の導入や合併などの届出基準の見直しなどが含まれている。これに伴い、規則などが改正されている。これらも、今後の経済・社会の変動や、新しい事例の出現にあわせて、必要に応じて改訂されることも望まれよう。
ところで、企業結合規制といえば、近頃、合併などの審査に時間がかかっている旨の報道がある。手続の期限なども規定しそれに基づいて行われているのだが、資料が不十分などの理由で時間がかかっているように感じる。時間がかかるので取りやめた事例もあるから、そのように感じるのだろうか。「公正かつ自由な競争の促進」、「一般消費者の利益の確保」、「国民経済の民主的で健全な発達の促進」を目的に掲げる独占禁止法を運用する公正取引委員会としては、厳粛な対応は仕方がないのだろう。しかし、国際的な競争にさらされている企業としてはスピードも求められており、何らかの対応が求められるところである。即効性のあるような処方箋があるわけでないが、時間短縮もひとつの課題と検討してもらえたらと、思われてならない。
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堀内 勇世
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