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株主総会の賛否数公表動向

2009年07月13日

政策調査部 主任研究員 鈴木 裕

6月下旬には多くの会社で株主総会が開催された。総会の当日は、質疑応答の後、採決を行い、議長から議案の可決について報告される。「圧倒的多数の賛成で原案の通り承認可決されました」と報告されるのが通常で、賛成が何票で反対が何票であったか、詳細が株主に知らされることはほとんど無い。

株主総会における採決については、法令上特別の規定は置かれていない。判例(最判昭和42年7月25日)でも、定款に別段の定めが無い限り、決議の成立に必要な賛成数に達していることが確認できればいかなる方法を用いてもいいとされている。実際上は、前日までに郵送されてきた議決権行使書面とインターネットによる議決権行使結果を合わせて、定足数が確保され、また可決に必要な賛成票があったことが判定できればよい。例えば100個議決権がある会社の株主総会で、特別決議を成立させるためには、定足数の50が決議に参加して、その3分の2が賛成していればいいのだが、67の議決権が賛成しているのであれば、定足数も自動的に充足することになる。つまり、67の議決権の賛成が確認できれば、残りの議決権の行方を確定しなくてもいいわけだ。残り33の議決権がどう行使されようと可決は動かないので、投票における賛否数に具体的に言及することなく圧倒的多数で可決承認されたという説明が実務では行なわれているのである。

しかし、こうした現状が大きく変わりつつある。機関投資家は、2000年代に入ってから、投資先の株主総会で多くの反対票を投じるようになっている。そのため、結果的に全議案が可決されようとも、自身の投票がどの程度他の株主の投票と一致しているか知りたくなることもある。会社側と機関投資家が対話する場合に、株主の総意がどのように分布しているかがわかれば、交渉にも有益だろう。また、投票と言う民主的多数決制を採用しているのだから、その結果を投票した者に知らしめるのは当然であるとの考え方もあり、賛否の詳細な報告を行うべきではないかと考えられるようになった。

こうした中で、会社側が票数まで公表する事例が増加している。ソニーや資生堂は、投票結果を開示する事例として知られているが、他にもコニカミノルタ、オムロン、三菱商事などが今年の投票結果を明らかにしており、総計では25社を超える。上場公開会社のごく一部に過ぎないことは確かだが、前年が5社程度であったことを考えると激増したともいえる。

東京証券取引所の「上場制度整備懇談会」は、「安心して投資できる市場環境等の整備に向けて」(4月23日) において「株主が議決権行使結果に容易にアクセスできるような制度の整備を進めていくことが望ましい」と提言した。また、金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」でも、「各議案の議決結果について、単に可決か否決かだけでなく、賛否の票数まで公表することが適当であり、法定開示及び取引所ルールにより、ルール化が進められるべきである」との報告書をまとめている(6月17日)。投票結果を公表していない会社でも、社内的には賛否の集計を行っているはずで、公表することによって新たに過大な事務作業が生じるわけでは無い。東証や金融庁での取り組みが進めば、来年以降は投票結果公表が珍しいものではなくなるのではないだろうか。

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