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中国辺境の地・寧夏回族自治区にみる景気対策の効果と外資導入への熱意

2009年06月22日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

6月10日~11日に中国日本商会調査委員会のミッション視察に同行し、寧夏回族自治区の首府・銀川を訪問する機会を得た。寧夏は、砂漠化の進む地域のひとつであり、少数民族である回族(イスラム教徒)が人口の36%を占める「辺境の地」と言われている。今回の訪問で印象的だったのは、(1)昨年11月発表の大型景気対策の効果が、寧夏でも確認されつつあること、(2)外資導入に並々ならぬ熱意をみせていることの2つであった。

寧夏の2009年1~3月期の実質GDP成長率は3.5%(全国は6.1%)にとどまった。寧夏の産業の特徴は、石炭、電力、有色金属、鉄鋼といった資源・素材関連のウエイトが高いことがあり、これら製品の需要減退が響いて、1~4月の工業生産は前年同期比0.3%増と前年同期の18.2%増からは17.9%ポイントの減速となった。減速幅は、西部大開発の対象12省・自治区・直轄市で最大である。それでも、寧夏経済は最悪期を既に脱している。工業生産は方向性でいえば、ボトムからの改善傾向にあり、昨年11月以降のマイナス成長から、4月にプラスに転じたのである。訪問先である工作機械のLGマザック(ヤマザキマザック社が100%出資)によれば、1~5月は前年同期比で減収を余儀なくされたが、前月比では増加ペースが加速、特に自動車向けや医療機器向けの工作機械の伸びが高いとのことであった。自動車では、排気量1.6L以下の車輌購入税の半減措置(価格の10%⇒5%)が、医療機器では、4兆元の大型景気対策における医療分野への重点配分(3月の全人代で投資規模が従来の400億元から1500億元へ大幅増加)の効果が、肌で感じられるという。

次に、外国からの直接投資導入については、2007年末の登記企業数は285社、投資額は22億米ドルと、全国の28万6232社、2兆1088億元との比較では、それぞれ0.1%を占めるに過ぎない。省別にみても、投資額はチベット自治区についで下から2番目である。このように寧夏は直接投資導入の後発地域であるが、当局による投資環境のプレゼンテーションとその後の質疑応答は、今回のミッション参加者に深い印象を残した。問いに対して、往々にしてありがちな抽象的な話しではなく、極めて率直かつ具体的な答えが返ってくるのである。例えば、中・高レベル技術者の育成・確保に関連する問いには、「寧夏には総合大学が3校しかないが、政府は2008年より人材育成に注力し、(1)沿海地域の大学の積極誘致(中国工業大学の銀川学院が2008年9月に開校)、(2)技術系学生の養成のため、専門学校を新設し、数年後には10万人規模の技術者を養成できる体制を整備、(3)企業ニーズと大学・専門学校の教育内容のマッチングを政府が推進する」との答えであった。比較優位のある産業の選別とそれに特化した人材の育成は、他の内陸部に共通した課題であるが、寧夏にはそれを実践しようとの意志が感じられたのである。当局者の一人は、山東省出身で横浜国立大学や一橋大学での留学経験を持ち、中国への帰国後は、内陸部の発展のため、志願して寧夏に赴任したのだという。彼らの熱意が寧夏の発展につながることを切に願う。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登