再トライ、独占禁止法の改正
2009年02月03日
公正取引委員会のホームページに掲載されている、公正取引委員会委員長の「平成21年 年頭所感」や平成21年1月14日付及び同月28日付の「事務総長定例会見記録」をみると、再び、独占禁止法の改正法案が現在開催中の通常国会に提出されそうである。ここで「再び」といったのは、昨年3月に通常国会に提出された独占禁止法の改正法案があったからである。この法案は提出されたものの、その通常国会で成立することなく継続審議となり、次の臨時国会に持ち越された。しかし、そこでも審議は進まず成立することなく廃案となってしまった。
この廃案となった法案は、次のような内容を含むものであった。
(1)課徴金の適用範囲の拡大
(2)主導的役割を果たした事業者に対する課徴金の割増
(3)課徴金減免制度の拡充
(4)株式取得の事前届出制の導入
(5)合併などの届出基準の見直し
これらは、最近の国際的な独占禁止法の分野の規制強化の流れを意識したものと思われる。特に(1)(2)などは厳罰化といえる。また(3)は取締りに貢献する制度であり、より一層の活用に資するものといえる。最近は、国内、海外を問わず、カルテル取締り等の報道が頻繁になされる。このような状況において、取締り強化のための独占禁止法の改正はぜひ行うべきであると思う。おそらく、上記の内容は、現在開催中の通常国会に提出される予定の独占禁止法の改正法案に、そのまま同じ形になるかは別として、盛り込まれるだろう。
現在開催中の通常国会に提出される予定の独占禁止法の改正法案は、上記の内容以外に、審判手続の見直しを加えて検討するとしている。課徴金納付命令などの行政処分に不服があって審判請求がなされた場合に、公正取引委員会が行う裁判に似た手続のことである。この審判手続については、議論があるところで、昨年廃案となった法案の附則の中にも、審判手続に関する規定に関して、「全面にわたって見直すものとして、平成20年度中に検討を加えて、その結果に基づいて、所要の措置を講ずる」という内容が盛り込まれていた。それゆえ、審判手続について、ある程度決着をつけ、新たに改正法案に盛り込むことになるのだろう。どのようになるかわからないが、この点が少し国会での審議などに時間がかかるところとなってしまうのではないかと思われる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年07月04日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
-
2022年07月01日
2022年5月雇用統計
失業率は4カ月ぶりに上昇するも、均して見れば雇用環境は改善傾向
-
2022年07月01日
2022年6月日銀短観
外部環境悪化と国内経済活動再開が製・非製の業況の明暗を分ける
-
2022年07月01日
ディスクロージャーワーキング・グループ報告(コーポレートガバナンスの開示等)
-
2022年07月04日
男性育休取得率の向上は「ゴール」にあらず
よく読まれているコラム
-
2021年12月01日
もし仮に日本で金利が上がり始めたら、国債の利払い費はどうなる?
-
2022年01月12日
2022年米国中間選挙でバイデン民主党は勝利できるか?
-
2022年05月31日
先進国からの制裁を浴びるロシアの通貨ルーブルが大幅上昇
~一旦半値に、その後資本規制により6年10カ月ぶりの高値へ~
-
2022年04月21日
日本経済はウクライナ危機・感染拡大の下で「悪い円安」に直面
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議