業績連動型・株価連動型の役員報酬制度改革の意義を考える

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2009年01月21日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 芦田 栄一郎

近年、役員報酬制度を改革する上場企業が増えている。平成20年9月現在、東証一部企業全体の約6割の企業が役員退職慰労金を廃止している。年功的・安定的に支給される退職慰労金の報酬制度と訣別し、業績連動型の役員報酬制度を取り入れようと試みるケースが多い。また、業績連動報酬の一環として株価に連動した報酬体系の導入も進んでいる。

業績連動型役員報酬の意義を考える

役員報酬制度にもやっと成果主義型の報酬体系が浸透してきた。企業の業績や貢献度合いに応じて報酬額が変動する成果主義型報酬は本来、上位役職者から始めて、上位役職者ほど厳しくあるべきである。しかし、日本企業の多くはまず一般従業員が成果主義にさらされ、後追いで役員も成果主義型に移行した感が否めない。導入順序が逆だったことを批判しても仕方ないが、今後役員報酬制度を再構築する場合には少なくとも従業員の報酬制度よりも企業業績との連動性を高め、変動比率も大きくし、可能な限り透明性のある報酬制度が望まれる。さらに上場企業の場合、株価や配当等にも責任を持ち、何に対して報酬が支給されるのかという方針を定めることが重要である。

株価連動型役員報酬の意義を考える

役員の報酬改革が進む中で自社の株価と連動する報酬制度を導入する上場企業が増えてきている。企業の業績を向上させ、株式価値との連動性を強化し、株価変動に伴うメリットとリスクを株主と共有することで中長期的な視点での企業業績の向上への士気を高めることを目的としているケースが多い。上場企業役員の責任の一端が明確になる点で評価できることである。株価と連動した役員報酬制度のバリエーションは多種多様であるが、大別して以下の3つに整理できるので制度改革の参考にしていただきたい。

  1. 一般的なストックオプション:自社株式を予め定められた一定の価格(権利行使価格)で購入可能なストックオプション。通常、権利行使価格は契約締結時の株価以上。
  2. 株式報酬型ストックオプション:権利行使価格が1円のストックオプション。役員退職慰労金を廃止した場合の代替として活用されるため、退任後に権利行使可能とするケースが多い。
  3. 役員持株会方式:月次報酬の中から、毎月定額を役員持株会に拠出する。在職中は自社株式を保有し、原則退任時まで売却しない。

役員報酬制度改革の留意点

役員報酬改革の選択肢は多様性に富んでいるが、単に時代の潮流に乗るのではなく、今一度「何のために支給するのか」という原点に立ち返り、株主の視点だけではなく、役員からの視点、従業員からの視点も考慮して、自社に適した報酬制度を構築すべきである。

以下役員報酬制度再構築の体系バリエーションを整理したので参照していただきたい。

役員報酬制度再構築の体系バリエーション 事例紹介

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芦田 栄一郎
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マネジメントコンサルティング部

主任コンサルタント 芦田 栄一郎