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中国の消費について

2008年12月10日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

中国でも景気減速が顕在化するなか、小売売上だけが好調を維持している。10月の小売売上は前年同月比22.0%増と9月の23.2%増からは若干鈍化したとはいえ、高水準の伸びとなった。消費は、10項目からなる景気予測指数の構成要素の中で唯一「オレンジ」(やや過熱)を維持している。しかも、国内自動車販売や商品住宅販売面積が前年比で大幅なマイナスとなるなかでである。

この現象を読み解く鍵は、「給料の大幅増加と資産の偏在」にあろう。2008年1-9月の都市住民平均給与は前年同期比18.3%増を記録するなど、所得の持続的増加が一般的な消費を後押ししている一方、住宅・自動車などの高額消費は、株価暴落や資源価格下落(炭鉱主など新興富裕層に打撃)といった富裕層への直接的な打撃を通じて、不振を余儀なくされているのである。米国のあるコンサルタント会社の推計によれば、100万米ドル以上の金融資産を保有する0.1%の家計が、中国の金融資産の45.2%を占有するとしており、資産の極端な偏在を示唆している。話は横道にそれるが、住宅販売の不振は、住宅市場正常化のためのチャンスでもある。富裕層+投資目的の住宅市場を一般的な勤め人+居住目的のためのものに変革していくのであり、その方法は、(1)住宅供給のシフト、(2)価格下落による。後者の場合は、幅の大きさはともかく、期間は短い方が好ましいことはいうまでもない。

小売売上に話を戻そう。今後も小売売上が好調を維持できるか否かは、消費者の所得環境に多くを依存することになる。しかし、(1)企業業績は7-9月期以降減益に転ずるなど、分配のためのパイが縮小している、(2)2006年以降、低収入層の所得引き上げに貢献してきた最低賃金の大幅引き上げが、企業負担の軽減や失業者急増回避(首切りではなく、賃金カットを選択)のため、先延ばし、あるいは暫定的に停止される方向にある、ことなどから、先行きを楽観視することはできない。好調を維持してきた小売売上の減速リスクを想定すべきである。

現在当局は、個人所得税の基礎控除の引き上げなど消費刺激策を検討しているが、これはあくまでも「つなぎ」である。本来的には11月9日発表の57兆円もの大型景気対策の効果が発現するのを待つしかなく、その効果発現までの時間の最短化が最重要課題である。この点で、先日発表された1.08%の大幅利下げは、目的達成に向けた明確な方向性を示したと評価できよう。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登