財政改革はいつか来た道?
2008年09月30日
世界景気が調整局面を迎える中、内閣が交替した。麻生太郎新首相は日本経済を全治3年と診断して、経済財政政策の手法を変えようとしている。これまでの路線の基盤を作った小泉純一郎元首相は、次期衆院選への不出馬を表明。政権選択といわれる総選挙も控えており、経済社会は大きな転機にある。
それにしても、財政改革の展開は約10年前の財政構造改革法(財革法)での経験と似ているところが多い。第一に、目標年次の設定パターンである。財革法は特例国債からの脱却と財政赤字GDP比3%以下の達成年度を立法過程で2年前倒ししたが、施行後わずか半年で2年先送りした。今回の基礎的財政収支黒字化目標も2013年度から11年度へと実質的に前倒しした経緯があるが、事実上の先送りが色濃くなっている。
第二は、社会保障の取扱い。財革法のときは、当時の小泉厚生大臣が社会保障だけは例外扱いすべきと主張し、法律を改正して歳出抑制方針を緩和した。今回も「毎年2200億円の社会保障費抑制は困難」という大合唱になっている。超高齢社会での財政改革のカギは社会保障にあり、その改革の足踏みは財政再建の失敗に直結する。
第三は、景気が悪くなったときに客観的基準で弾力運用する仕組みがない点。不幸にも財革法は、金融機関の大型破綻に象徴される未曾有の流動性危機に見舞われた。行われたのは4兆円の定額減税をするために、特例国債減額を棚上げする条件を後知恵で書き込むことだった。現在も「経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う」という念仏のような一文があるだけで具体性がない。これでは景気が調整すると、その程度にかかわらず財政改革が骨抜きになりやすい。
そして第四が定額減税である。1997年に定率減税を廃止した後、当時の橋本龍太郎首相は97年末と98年春の2回にわたって定額減税を表明した。今回は2年をかけて定率減税を廃止した直後、定額減税の実施を政府・与党が決定した。その後、橋本政権は98年7月の参院選で敗れ、退陣に追い込まれたのは周知の通りである。
最終的に財革法は凍結され、それによる財政改革は失敗した。97年前半に財革法を作った第2次橋本内閣の顔ぶれをみると、現在の麻生首相が経済企画庁長官、与謝野馨経済財政政策担当相が内閣官房副長官だった。新内閣には、財革法が辿った経過で数多く得られた教訓を生かして、一歩進んだ財政改革をぜひとも期待したい。
それにしても、財政改革の展開は約10年前の財政構造改革法(財革法)での経験と似ているところが多い。第一に、目標年次の設定パターンである。財革法は特例国債からの脱却と財政赤字GDP比3%以下の達成年度を立法過程で2年前倒ししたが、施行後わずか半年で2年先送りした。今回の基礎的財政収支黒字化目標も2013年度から11年度へと実質的に前倒しした経緯があるが、事実上の先送りが色濃くなっている。
第二は、社会保障の取扱い。財革法のときは、当時の小泉厚生大臣が社会保障だけは例外扱いすべきと主張し、法律を改正して歳出抑制方針を緩和した。今回も「毎年2200億円の社会保障費抑制は困難」という大合唱になっている。超高齢社会での財政改革のカギは社会保障にあり、その改革の足踏みは財政再建の失敗に直結する。
第三は、景気が悪くなったときに客観的基準で弾力運用する仕組みがない点。不幸にも財革法は、金融機関の大型破綻に象徴される未曾有の流動性危機に見舞われた。行われたのは4兆円の定額減税をするために、特例国債減額を棚上げする条件を後知恵で書き込むことだった。現在も「経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う」という念仏のような一文があるだけで具体性がない。これでは景気が調整すると、その程度にかかわらず財政改革が骨抜きになりやすい。
そして第四が定額減税である。1997年に定率減税を廃止した後、当時の橋本龍太郎首相は97年末と98年春の2回にわたって定額減税を表明した。今回は2年をかけて定率減税を廃止した直後、定額減税の実施を政府・与党が決定した。その後、橋本政権は98年7月の参院選で敗れ、退陣に追い込まれたのは周知の通りである。
最終的に財革法は凍結され、それによる財政改革は失敗した。97年前半に財革法を作った第2次橋本内閣の顔ぶれをみると、現在の麻生首相が経済企画庁長官、与謝野馨経済財政政策担当相が内閣官房副長官だった。新内閣には、財革法が辿った経過で数多く得られた教訓を生かして、一歩進んだ財政改革をぜひとも期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
調査本部
常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準