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中国の業績拡大ペースの鈍化、その背景と今後の注目点

2008年09月09日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

上海証券取引所によれば、上海上場863社の2008年上期決算は15.9%増益と、2007年上期の69.2%増益から大きくスローダウンした。さらに、中国では2008年より企業所得税率が33%から25%に引き下げられており、この効果が除かれる税前利益ベースでは5.5%増益にとどまる。業績拡大ペース鈍化の主因は、原材料価格高騰や労働賃金上昇などのコスト高であり、売上高総コスト率は2007年上期の80.9%から2008年上期は87.8%へと大きく上昇している。コスト上昇を価格転嫁や企業努力で賄いきれていない姿が浮かび上がる。

上海市場上場会社の業種別利益水準をみると、金融(銀行、保険、証券)と採掘業が、利益の大半を占める構造となっているが、2008年上期はこの二大産業が、明暗を大きく分ける結果となった。金融セクターでは銀行が極めて好調であった。上海上場の12行は全て大幅増益を達成し、特にCITIC銀行は162.6%の増益を記録。工商銀行は648.8億元の利益を計上し、世界の銀行で最大の利益を獲得したとされる。銀行の業績好調は、基本的には潤沢な預貸スプレッドに裏付けされた利息収入の増加によるものである。貸出基準金利は2007年12月21日を最後に引き上げられていないが、当局の引き締め強化を受けて、貸出平均金利は1月~5月に大きく上昇しており、業績拡大に寄与した。

一方で、採掘業は中核となるペトロチャイナとシノペックが大幅減益を余儀なくされた。原油価格が高騰するなか、政府の厳しい統制下におかれるガソリン価格は、2007年11月以降、価格が据え置かれた結果、精製部門は生産をすればするほど赤字が巨額化していた。2008年6月20日にようやくガソリン価格は16.7%引き上げられたが、この効果は赤字縮小にとどまっている。同様の構図は、石炭を主原料とする電力各社にもそのまま当てはまる。

今後について、2007年に利益を嵩上げした投資収益は、むしろこれから悪化が顕在化する可能性が高い。上海総合株価指数を前年同月比で見た場合、マイナスに転じたのは2008年4月以降であり、株価が大きく戻さない限り、10月(比較対象は史上最高値を付けた昨年10月)に向けてマイナス幅は一段と拡大することになる。よって、業績改善には、従来以上に本業での利益改善が重要になってこよう。この点で(1)中小型企業を中心に資金繰りが悪化するなど引き締め策の弊害が顕在化しており、高成長維持のための具体的な金融緩和策・景気刺激策が発動されるか、(2)消費者物価の沈静化傾向を受けて(CPI上昇率は2月の8.7%⇒7月には6.3%)、ガソリンや電力など政府統制価格の引き上げがいつ実施されるか、さらには1月中旬以降の主要食品の値上げ抑制策がいつ緩和されるか、などが今後の注目材料として上げられよう。特に、ガソリン価格については、時価総額ウエイトの2割以上を占める石油関連の業績改善期待を大きく左右するだけに、要注目である。当局が全身全霊を傾けてきた北京五輪が終了したこともあり、政策発動のタイミングは熟してきたとみている。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登