ファイアーウォール規制の緩和は銀行・証券間の兼職を促進するのか
2008年07月15日
6月6日に、ファイアーウォール規制の緩和等を含む金融商品取引法等の改正が可決・成立した。改正内容のうちファイアーウォール規制の緩和等については、公布日である6月13日から1年以内に施行されることとなっている。
今回のファイアーウォール規制の緩和は、証券会社とグループ銀行等との役職員の兼職規制が撤廃されたということである。ここで注意しなければならないのは、改正前の兼職規制は、証券会社の取締役等がグループ銀行等の取締役等を兼職することを禁止してはいたが、証券会社の従業員がグループ銀行等の従業員を兼職することを禁止していたわけではないということである。とはいっても、顧客の非公開情報の授受の禁止という別の規制によって、従業員レベルでも兼職することは実際上許されなかったと考えられる。仮に証券会社の従業員がグループ銀行の従業員を兼職すれば、同一人物の中で必然的に顧客の情報が共有されてしまい、顧客の非公開情報の授受の禁止の規制に違反してしまう。よって、従業員レベルでも兼職は実際上できなかったと考えられるわけである。
このように、実際に兼職が認められるか否かは、兼職規制のみならず顧客の非公開情報の授受の禁止という別の規制も検討しなければならない。しかし、さらに問題を複雑にしているのが、顧客の非公開情報の授受の禁止の規制も見直されると予想されていることである。この規制の改正は今回の法改正には盛り込まれなかったが、今後行われる内閣府令の改正に盛り込まれると予想されている。
では、どのように改正されるのかだが、これについては金融商品取引法の改正について議論を行った金融審議会での議論が参考になる。それによれば、顧客が法人である場合、顧客が顧客情報の共有を望まないという意思を表明しない限り、グループ内で情報共有することが認められるという規制に改正されると予想される。
仮にこのように規制が改正されたとして、証券会社とグループ銀行の従業員レベルでの兼職は可能になるのだろうか。法人顧客の場合でも、顧客は情報共有を拒否できるので、少なくとも顧客と直接対面するフロント部門の従業員が兼職することは難しいだろう。なぜなら、そのような従業員が証券会社と銀行の従業員を兼職していれば、顧客に「当社の情報を御社のグループ会社内で共有することを拒否します」と言われた場合に対処することが難しいからである。
以上のように、ファイアーウォール規制の緩和によって実務でどこまでが許されるようになるかを検討すると、今回の緩和により大幅に従業員レベルで兼職が促進されると考えることは難しい。
今回のファイアーウォール規制の緩和は、証券会社とグループ銀行等との役職員の兼職規制が撤廃されたということである。ここで注意しなければならないのは、改正前の兼職規制は、証券会社の取締役等がグループ銀行等の取締役等を兼職することを禁止してはいたが、証券会社の従業員がグループ銀行等の従業員を兼職することを禁止していたわけではないということである。とはいっても、顧客の非公開情報の授受の禁止という別の規制によって、従業員レベルでも兼職することは実際上許されなかったと考えられる。仮に証券会社の従業員がグループ銀行の従業員を兼職すれば、同一人物の中で必然的に顧客の情報が共有されてしまい、顧客の非公開情報の授受の禁止の規制に違反してしまう。よって、従業員レベルでも兼職は実際上できなかったと考えられるわけである。
このように、実際に兼職が認められるか否かは、兼職規制のみならず顧客の非公開情報の授受の禁止という別の規制も検討しなければならない。しかし、さらに問題を複雑にしているのが、顧客の非公開情報の授受の禁止の規制も見直されると予想されていることである。この規制の改正は今回の法改正には盛り込まれなかったが、今後行われる内閣府令の改正に盛り込まれると予想されている。
では、どのように改正されるのかだが、これについては金融商品取引法の改正について議論を行った金融審議会での議論が参考になる。それによれば、顧客が法人である場合、顧客が顧客情報の共有を望まないという意思を表明しない限り、グループ内で情報共有することが認められるという規制に改正されると予想される。
仮にこのように規制が改正されたとして、証券会社とグループ銀行の従業員レベルでの兼職は可能になるのだろうか。法人顧客の場合でも、顧客は情報共有を拒否できるので、少なくとも顧客と直接対面するフロント部門の従業員が兼職することは難しいだろう。なぜなら、そのような従業員が証券会社と銀行の従業員を兼職していれば、顧客に「当社の情報を御社のグループ会社内で共有することを拒否します」と言われた場合に対処することが難しいからである。
以上のように、ファイアーウォール規制の緩和によって実務でどこまでが許されるようになるかを検討すると、今回の緩和により大幅に従業員レベルで兼職が促進されると考えることは難しい。
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金融調査部
主任研究員 金本 悠希
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