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中国の地域別産業・外資導入政策における差別化戦略の重要さ

2008年06月09日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

中国では東部沿海地域が外資導入を梃子に輸出指向型の高成長を遂げる一方、中西部地域の外資導入は、思ったような成果を挙げられずにいる。

例えば、西部大開発の中心都市である重慶市は、97年の直轄市昇格を契機に、「1996年~2000年は年間7~8億米ドル、2001年~2010年は年間15億米ドルの外資を導入する」との意気込みを見せていたが、96年~2006年の累計では、計画の125億米ドルに対して、実績は約半分の63.5億米ドルにとどまった。その要因は何であろうか。一般的に指摘される、(1)交通を中心とするインフラ整備、(2)外資系企業に対する優遇策の付与、(3)受入体制の整備に問題があったわけではなく、これらはむしろ積極的な整備が行われていた。重慶市の日系企業へのヒアリングで共通したのは、極論すれば、「重慶市が内陸に位置する」という所与の条件そのものである。具体的には、輸出産業を想定した場合、原材料・部品の輸入や完成品の輸出には、上海を経由した水運を主に利用することになるが、その時間的・コスト的ロスが、外資導入が思うように増えない要因となっているというのである。

これは、東部沿海地域以外の地方に共通する課題である。2006年末時点の地域別の外資系企業投資総額シェアは、東部78.5%、東北8.1%、中部7.3%、西部6.0%と東部が圧倒的に高く、そこから地理的に遠いほどシェアが低くなっている。2000年~2006年の純増分でみても「東高西低」に変化はない。地理的条件の不備もあり、輸出産業の育成という東部沿海地域の成功体験の焼き写しは通用しないのである。

より重要なのは、地域の産業発展戦略の差別化(外資導入における産業選別化)なのだが、地域別の外資導入重点分野をみると、31の省級行政単位のうち、実に29がハイテク産業を挙げている。特に、ソフトウエア開発を育成したいとする地方政府が目立ち、これは、(1)比較的高賃金かつ大量の労働者を必要とすることから、地元の雇用・消費活性化への貢献が期待される、(2)基本的に物流を必要としないため、海外を含む需要先との距離は問題にならない、といった特性によるものであろう。しかし、ハイテク産業は、全国的に15%の優遇税率が適用されており、中西部の優位性が保証されているわけではない。

現在、中国では中西部地域のインフラ投資が大きな盛り上がりをみせているが、その先の産業発展の未来図はなかなか見えてこないのが現状であり、このままでは全国各地に散らばった各種開発区の多くが共倒れになりかねない危うさを秘めている。今後求められるのは、(1)地域毎の資源や産業基盤などに基づく重点育成産業の選定と全国的な産業配置図の作成、(2)それをサポートするための特定の産業育成に的を絞った投資環境整備(個別産業に特化した教育機関の充実や人材の育成など)、そして(3)戦略的な外資導入などである。まずは外資導入ありきではない。如何にして地域的・産業的な特色を打ち出せるかが、優勝劣敗の鍵を握ろう。

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