ファイアーウォール規制から利益相反管理体制の構築へ
2008年04月03日
| 3月4日、金融商品取引法等の改正法案が国会に提出された。これは、昨年12月に発表された金融審議会の報告や金融庁の「金融・資本市場競争力強化プラン」などを受けたもので、改正項目は、非常に多岐にわたっている。そのなかで銀行や証券会社の経営の観点から特に注目される項目は、証券会社・銀行等の間のファイアーウォール規制の見直しと、利益相反管理体制の構築である。 従来から、銀証分離規制の下で銀行は証券業務が一定限度に制限されていたが、1993年の金融制度改革法により、銀行が証券子会社を設けることなどが認められた。しかし、同時に銀証の相互参入などによる弊害を防止するために、銀行と証券子会社等との間に設けられた業務上の隔壁がファイアーウォールである。
今回の改正法案では、ファイアーウォール規制のうち、役職員の兼職規制が撤廃されており、規制が一部緩和されている。その一方で、改正法案では証券会社・銀行等に利益相反管理体制を整備することが義務付けられている。具体的な規制は現段階では明らかではないが、金融審議会の報告を参考にすれば、証券会社・銀行等に対して、どのような場合に利益相反が生じるかを特定したうえで、利益相反管理方針を策定して利益相反を管理することが求められることが予想される。 このように、ファイアーウォール規制が一部緩和される一方で、銀行・証券会社等に利益相反管理体制の構築が求められるということは、銀行・証券会社等に自主的な取り組みが求められるということを意味する。ファイアーウォール規制の下では、規制される行為が法令で明らかにされていた。しかし、利益相反管理体制の構築では、どのような状況のときに利益相反が生じるかを各社が自主的に特定しなければならない。今後は、単に法令で定められたラインを形式的に守っていればよいという態度ではなく、顧客の利益のためには何をしなければならないかを主体的に考えることが求められるということを改めて認識する必要があるだろう。 |
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 金本 悠希
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