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財政改革と経済成長の二兎を追え

2008年03月04日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 政策調査部長 鈴木 準

政府は、2011年度において基礎的財政収支(※1)を黒字化させる目標を掲げている。赤字体質の政府財政が、生活水準の低下や企業活動の低迷を招いてはならない。財政改革の最終的な目的は、財政の資源配分機能や再分配機能を立て直して、国民の生産性を向上させ、実質所得を拡大させることである。

経済財政諮問会議などで、日本の成長力や競争力の強化について議論が進められてきた。しかし、どんな歳出構造や税制が成長促進的であるかといった点にまで、十分には踏み込めていないと思われる。収支尻を合わせるだけの増税論議に終始するだけでは不十分であり、無駄な支出や非効率な支出の改革こそが重要である。

また、労働や資本の生産性を向上させて実質成長率を高めれば、財政問題を含めた多くの課題を解決・緩和するという逆の関係もある。経済成長があれば国民負担増も可能だが、それなしに増税を行おうとすれば財政再建は頓挫するに違いない(※2)

改革志向・成長志向が低下していないか

基礎的財政収支の黒字化を課題に取り上げた小泉純一郎政権下での政策は、手段や効果に賛否両論があるにせよ、成長志向であることが随所からうかがわれた。安倍晋三政権では、労働生産性上昇率を5年間で1.5倍とする新たな目標が設定された。福田康夫政権でも、それらの目標は承継されている。

ただし、07年夏の参院選後の経済政策論議は、国民所得の拡大ではなく、その分配問題に偏りつつあるようにみえる。政府の成長戦略に対する意気込みは消沈気味で、政策の話題は不安定な政局を踏まえたものや次回の総選挙をにらんだものが多い。財政支出の配分の奪い合いはゼロサムゲーム(※3)に陥りがちであり、安易な支出拡大は財政改革の先送りの様相を帯びてくる。

経済財政運営に関する政府の中期的な方針を示す「日本経済の進路と戦略」(07年1月策定)が、08年1月に改定された。それに付随する内閣府の試算では、GDPの拡大ペースが緩やかになるとされ、11年度の名目GDPは23兆円の下方修正となった(下図参照)(※4)。財政支出の削減に消極的なシナリオや低成長に甘んじるシナリオの増加を、外国と対比しても調整色が強い日本の株式市場は鋭く映しているのではないか。経済政策のダイナミズムを取り戻せるか、日本経済は中期的な成長進路が浮上するか失速するかの正念場を迎えていると思われる。

名目GDPのシナリオ
(※1)基礎的財政収支とは、二次的な財政赤字である利払いを除いた財政収支のこと。基礎的財政収支のGDP比率を適切にコントロールすれば、政府債務残高のGDP比率もコントロールできる。

(※2)07年10月17日の経済財政諮問会議に有識者議員が提出した資料「給付と負担の選択肢について」によれば、社会保障改革を行った場合、経済が実質1.7%成長であれば25年度までの増税は約8兆円だが、0.9%成長の場合は約24兆円になるという。所得が伸びず、増税が大きいシナリオは、二重の意味で望ましくない。

(※3)一方の利益が他方の損失となり、合計ではゼロとなるゲーム。

(※4)なお、経済動向の実績が反映されたことにより、08年1月試算では07年1月試算と比べて07年度の名目GDPが約6兆円下方修正されている。

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鈴木 準

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