中国の引き締め強化はやはり本気か?

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2007年12月27日

  • 肖 敏捷
足元では、新規融資の凍結をはじめ、預金準備率や預貸金利の引き上げも相次いで実施されるなど、金融引き締めをめぐる動きが活発化している。また、来年1月の上旬に開催される予定の中央銀行工作会議では、2008年の新規融資枠などについてより厳しい引き締め目標が打出されるのではないかとの懸念が拡がっている。投資ブームを抑制するため、2004年春から、中央政府は引き締め措置を実施し始めたが、引き締め政策を強化すればするほど、実質経済成長率が高くなるという皮肉な状況が続いているため、中央政府は本気に引き締めを行っていない、あるいは地方政府の抵抗を容認しているのではないかとみられていたが、今回は果たして本気なのだろうか?

先日、中央経済工作会議が北京で開催された。この会議の終了直後から、中国のマスコミは、中央経済工作会議に関連した全国各地の学習会に関する報道一色となっている。過去の経験から、このような報道ぶりは新たな政治キャンペーンの始まりだと感じる人も少なくないはずだ。しかし、今回の狙いは、政治闘争ではなく、胡錦涛総書記が提唱した「科学的発展観」がスローガン倒れにならないよう、共産党や政府にその徹底的な実施を求めていることにある。政治キャンペーンの形でその実施を呼びかける背景には、不動産などの開発ブームから既得権益を享受している関係省庁や地方政府などの抵抗を政治力で徹底的に排除する胡錦涛政権の決意がある。

来年3月に開催される予定の全人代では、行政トップ人事の刷新や中央政府の省庁再編が予定されている。従来、共産党大会や全人代の開催と前後して、人事レースが成長率競争レースにつながる、いわゆる党や政府の「人事サイクル」が指摘されていたが、今回は、引き締めの実施が昇進の条件として求められているため、引き締めの「成果」を競い合う動きが急速に広がると考えられる。

93年夏に中央銀行の総裁を解任した朱鎔基副総理(当時)は自ら総裁を兼任するかたちで、引き締め強化の決意を示した。来年3月に朱鎔基氏の腹心だった王岐山政治局委員が金融担当の副総理に抜擢されるのみでなく、中央銀行総裁のポストを兼任する観測も流れている。真相はともかく、今回の引き締め強化に対する中央政府の対応がやはり本気だと考えたほうが妥当であろう。

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