平成20年度税制改正による新公益法人へのインセンティブ

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2007年12月25日

  • 経済調査部 市川 拓也
自民党の平成20年度税制改正大綱が12月13日にまとまった。公益社団法人、公益財団法人(以下、新公益法人)に関する新税制については、かねてから高い関心が寄せられていた部分であるが、今回の大綱をみる限り、かなり充実した内容になっている。特定公益増進法人(以下、特増)対象への追加のほか、公益目的事業であれば収益事業でも非課税となり、収益事業の資産からの公益目的事業への支出のみなし寄附など、税制から多面的にサポートする内容となっている。新公益法人制度の税制の議論では、平成15年初旬に大荒れし、特定非営利活動法人が新制度のしくみから抜けるという事態にまで発展した経緯があるだけに、課税強化との批判を受けないよう十分配慮したものとみられる。

ただし意外なのは、一般社団法人・一般財団法人(以下、一般法人)に対して非常に手厚い優遇措置を設けている点である。非営利一般法人は従来のとおり収益事業のみの課税であり、さらに剰余金の分配を行わない定款を有するなど特定の一般法人は特増並みの寄附金税制まで用意されているのである。その他の一般法人は法人税法上、普通法人として課税されるものの、非営利一般法人であれば移行による税制面でのデメリットは、当面、大きくないとみられる。

そこで気になるのは、現行の公益法人のインセンティブとしてはどちらに働くのであろうかという点である。公益を名乗りたいなどの理由で公益認定を受けたいとする法人も少なくないであろうが、税制優遇を最大のポイントとして考える法人にとっては、一般法人で十分とする法人も数多くでてくるのではないだろうか。

考えてみれば、これまで新公益法人は自動的に特増を受けられるという観測のもとで、時には特増並みの厳しい認定要件を受け入れざるを得ない雰囲気になっていたのであるが、もともと特増のメリットを享受していない公益法人にとっては非営利一般法人でも大差はなく、従来よりも遥かに厳しい要件で制約を受けるよりも非営利一般として従来どおりの活動ができるほうを選択しても無理はない。こうして一般法人に大挙して移行するならば、是非はともかくとして、単に現行の特増公益法人≒新公益法人、現行の非特増公益法人+中間法人≒一般法人とならないだろうか。一般法人への誘導と、後の課税強化というシナリオは行き過ぎた思い違いであるにせよ、今後示されるガイドラインが現行公益法人の新公益法人移行を促すような“暖かい”ものとなるよう期待したい。

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