震源地より揺れが大きい日本経済

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2007年12月03日

  • 原田 泰

日本経済が不安定な状況になっている。この元凶はアメリカのサブプライムローン問題とされているが、サブプライムはアメリカの問題である。にもかかわらず、震源地のアメリカではなく、日本での揺れのほうが大きいようだ。震源地よりも、離れた地域の揺れが大きいのは地盤が良くないからだろう。日本の経済地盤が軟弱なのだ。それは、日本に、構造改革を進め、デフレから脱却するという強固な意志が見られないからではないか。

構造改革路線は停滞し、予算のバラマキを求める声が日増しに強まっている。予算をばら撒くために増税をするしかないという声も強まっている。これでは、経済を効率化して実質成長率を底上げすることは出来ない。

デフレから脱却するという意志も感じられない。日銀の金融政策は、物価上昇率が0%を少しでも上回れば、引き締めの方向に動いてきた。このような「0%インフレ率ターゲット」政策では、サブプライムローン問題などで世界経済が停滞し、外需が減少した場合には、インフレ率ののりしろがない日本は再びデフレに陥るリスクがある。

本年6月まで1.9%を窺っていた長期金利は、11月22日、一時1.4%を割れた。2005年9月以来2年2か月ぶりのことである。前にも書いたように(本欄2006.08.01「金利を上げたら金利が下がった」)、長期金利は名目GDPの成長率に等しくなる傾向がある。長期金利が低下するとは、市場が、名目GDP成長率の低下を予想していることになる。すなわち、実質GDPの成長率か物価上昇率、もしくはその両方が低下することが予想されている。

構造改革とデフレ脱却の意欲が低下したままでは、日本で、震源地より揺れが大きくなることが続くのではないか。

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