リラクセーションビジネスの動向

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2007年11月30日

  • 甲斐 友美子
「スピリチュアル」や「ホリスティック(※1)」という言葉になじみがない人や抵抗がある人も「リラクセーション」には興味があるのではないだろうか。

そもそもリラクセーションというと、マッサージサロンを思い浮かべることが多いが、カバーする範囲は広い。癒しに関するサービスはもちろんのこと、美容・健康にかかわるサービス、さらには娯楽を含め、広い意味でリラクセーションビジネスといっても差し支えないだろう。具体的には、マッサージ、フィットネスクラブ、エステサロン、スパ、ヨガスクール、マクロビオティック(※2)の食材、アロマテラピーなどが挙げられる。また、数年前から「LOHAS(※3)」という生活スタイルが流行。不調を感じる働く女性や、社会的なストレスの増加により、ニーズが高まっている分野である。

心へ働きかける癒し

もともと身体の不調に対処するものとしてニーズが高まったリラクセーションサービスだが、最近は心に働きかける要素が重要になっている。そこで出てくるのが、前述の「スピリチュアル」や「ホリスティック」である。

スピリチュアルは、直訳では「霊的な」という意味だが、心のあり方や精神という意味で使われていることが多いようだ。ホリスティックは、心と身体の全体のバランスを整えることにより、自然治癒力を高め、健やかな状態を維持しようとする考え方である。その方法として、スピリチュアルと言われるような手段も排除していない。

これらが頻繁に話題に上るようになったのは、テレビ番組などの影響も大きいと思われるが、最近の傾向として、人々の興味が自分の内面に向いていることが挙げられる。さらに、関連する商品やサービスに身近に接することができるようになった影響もある。例えば、リフレクソロジー(※4)サロンはいたるところで見かけるようになった。また、パワーストーンを扱うチェーン店の出現により手軽に安価な石が買えるようになり、旅行会社はパワースポットと呼ばれる場所をめぐるツアーを組んでいる。今後、これらの要素を採り入れ、リラクセーションビジネスはさらに多様なものとなるであろう。

ただし、「スピリチュアル」や「ホリスティック」を標榜する業者には、悪徳なものや一般的には受け入れがたい考え方を提唱するものなども一部では存在する。公開イベントが開催され、業界の健全な発展を促す動きも見られるものの、有効性の検証がなされずに、多数の個人事業主や協会が乱立する現状では、いわゆる「オカルト」や「霊感商法」といったマイナスイメージも付きまとう業界であることは否めない。今後の資格や法の整備が必要とされるところだが、いずれ成長企業が出てくることが期待される。

(※1)ギリシャ語の「holos」を語源としており、全体という意味である。

(※2)長寿食、自然食の意味で、別名「食養」とも言われている。

(※3)「Lifestyles of Health and Sustainability」の頭文字をとった略語で、「健康と地球環境」に高い意識を持つライフスタイルのこと。

(※4)足裏などにある、身体全体に対応した「反射(Reflex)区」を刺激することにより血液やリンパの流れをスムーズにし、不調や痛みを和らげる健康法。

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