株安時・賞与期のバリュー型投信への資金フローに注目

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2007年11月29日

  • 壁谷 洋和
現在の株式市場では悲観心理が蔓延し、株式相場は下値模索の展開となっている。海外投資家の売買は売りに傾き、株価反転のきっかけを見失った状態にある。外国人の売り越し姿勢が鮮明となる状況下では、逆に国内投資家の逆バリ的な買いは膨らむ傾向にある。その一例が投信である。当初は2007年の有力な買い手と期待されながらも、思うように資金が流入しなかった投信だが、株価が急落した3月、8月については資金フローがプラスとなった(図表1)。

図表1 国内株式型投信一般型各タイプの資金純流出入(億円)
国内株式型投信一般型各タイプの資金純流出入(億円)
(出所)大和ファンド・コンサルティング[DFC]による集計に基づき大和総研作成
(注)DFC分類における国内株式型-アクティブ-一般型の内訳を示した。

また、時期的にはこれからいよいよボーナス・シーズンへと突入していく。改めて指摘するまでもなく、6月、12月のボーナス・シーズンにおいては投信に対する資金流入の増加が顕著となる(図表2)。12月の投信販売は1年を通じて見ても、6月のボーナス・シーズンに次いで盛り上がりを見せる。目先、投信への資金流入が活発化する可能性もあろう。ただ確かに、金融商品取引法施行による販売の煩雑化や株価急落という逆風が吹いていることも事実である。とはいえ、投信販売は今や銀行、証券会社の生命線ともなっており、極端な販売手控えは命取りとなりかねない。また、株安局面であっても、かえって魅力度の高まるバリュー型投信に対しては比較的資金が流入しやすい(図表1)。

図表2 過去5年間における月別の株式投信資金純流入額(億円)
過去5年間における月別の株式投信資金純流入額(億円)
(出所)投資信託協会公表データより大和総研作成 (注)過去5年間[2002年11月-2007年10月]における株式投信の純流入額[設定-解約・償還]を月別に平均値をとった。

11月21日にはバリュー型投信に分類される「野村バリュー・フォーカス・ジャパン」が新規に設定された。初日の設定額は約100億円と、さほど大規模ではないものの、逆風下での新規設定にあっては健闘したと言えるのではないか。その他、大和ファンド・コンサルティングの分類によるバリュー型投信の純資産額は10月末時点で約1.9兆円。国内株式型投信全体の純資産額(8.6兆円)に対する割合は2割強となっている。特に好配当型の占める割合が大きい。全体の2割強を占めるこの種の投信に対する資金フローが、当面は注目される。

図表3 DFC分類による国内株式・バリュー型投信の純資産額上位
DFC分類による国内株式・バリュー型投信の純資産額上位
(出所)DFCの集計データに基づき大和総研作成
(注)純資産額は2007年10月末時点。リターンは10月末を基準に過去に遡ったもので、
分配金込みの当該期間の騰落率。
 

運用会社各社が公表している週次・月次レポートをもとに、図表3に掲げた投信に組入れられている銘柄を集計すると、バリュー型投信に好まれやすい銘柄の特徴がある程度把握できる。週次・月次レポートで公表されているのが、各投信の組入れ金額上位10銘柄程度であるため、集計上、時価総額の大きい銘柄が上位にランクされてしまう問題はあるが、自動車、銀行、商社、鉄鋼など低PER業種に属する銘柄の組入れが多いことが分かる。また、好配当型投信の組入れによって、電力などの高配当利回り銘柄も上位に顔を出す。株安時・賞与期にバリュー型投信への資金流入が活発化することで、これらの銘柄群については目先堅調な株価推移を期待できるかも知れない。

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