SaaSの行方

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2007年11月22日

  • 喜多見 裕史
IT業界では、毎年たくさんのキーワードが誕生している。ERP、SCM、CRMなど3文字略語が代表的な事例である。最近ではユビキタスやWeb2.0などが話題となった。話題を集めたキーワードは市場に定着したものもあれば、時間の経過とともに市場の関心が薄れていったものも少なくない。

2007年に話題を集めたキーワードの一つに「SaaS」がある。SaaSは、Software as a Serviceの頭文字を取った略語である。ソフトウエアの機能をネットワーク経由で提供するサービスの形態である。ユーザーはソフトウエアを所有するのではなく、サービスとして利用する。

このようなサービスの形態は、これまでASPと呼ばれていた。ASPは2000年前後に話題を集めたが、やがて沈静化していった。SaaSとして再び注目が高まった背景には、ネットワークのブロードバンド化が進んだこととともに、カスタマイズの容易性や操作性の向上などユーザーの使い勝手が向上したことがある。使い勝手の向上には技術の進展が寄与している。SaaSはASPが進化した形態といえる。

先行する米国ではCRMや人材管理など様々な分野でSaaSが提供されている。中小企業だけでなく大企業の利用も進みつつある。日本においてもSaaSに対する企業の関心が高まっている。

キーワードの多くはベンダー主導のもとで誕生する。初期段階では話題性の高まりと市場ニーズとの間に乖離が生じ、やがて話題性は沈静化することが多い。SaaSは新たに誕生したキーワードであるが、ASPが進化した形態と捉えれば、国内における企業の関心の高さを理解することができよう。

国内においてSaaSの利用はまだ始まったばかりである。関心が高まっているとはいえ、内容の理解はこれからである。企業がソフトウエアを所有する意識は依然として根強い。品質に対する要求も高い。市場環境に合致した日本型SaaSの登場が望まれる。

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