ロシアのインフラ整備

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2007年11月14日

  • 渡邊 眞
10月中旬にロシアに出かける機会があった。ロンドンからモスクワへのフライト時間は3時間半ほどである。ところがモスクワ空港から市内までの車の移動も、運が悪いと3時間半程度かかることもしばしばある。空港と市内を結ぶ高速道路は片側5車線もあるような立派なもの。こうしたモノだけを見ればロシアはインフラが悪いとは思えない。今回の訪問で、「ロシアはDeveloping Country(発展途上国)ではない。Miss-Developed Country(やや異なった発展をした先進国)だ」とのあるファンドマネジャーの話が印象に残った。モスクワやサンクトペテルブルグは、他のヨーロッパの主要都市(パリやローマなど)と町並み、文化水準に関して同等レベルに近い。少なくとも高級車の往来、飲食等の店舗・サービスに関しては他都市と全く遜色ない状況にある。しかし、旧体制下で整然と整備された道路、交差点、陸橋、等々はどうも使い勝手が悪くなっているのである。

インフラといえばしっかりとした金融システムも経済発展に欠かせないものである。とある都市の中央銀行の支店で、「当地の経済情勢はいかが?」との質問に返ってきたのは、「経済のことを語るのは中央銀行の業務の範疇ではない」。中央銀行の業務は、「国家のお金の出し入れの管理」らしい。話は今年内に全土で導入される予定の最新の決済システム(日銀のシステムを模範にしているとのこと)で終わってしまい、どうも気まずい思いをしたものであった。

というロシアであるが、モノのインフラ整備面で本格的なインフラプロジェクトを担うべく「ロシア開発銀行」が、旧来の公的銀行が合併・改組される形で07年5月に設立された。唯一外部から招聘された同行の副総裁は、地方金融を専門とした経済金融センターで教鞭を取り、その後経済省の役人、民間銀行でコンサル業務に従事し、ロシア議会の上院議員をも務めた異色の経歴の持ち主。また、9月に新首相に指名された、ビクトル・ズブコフ氏は金融監査庁長官であった人物であり、ロシアの歴代首相の中で金融に詳しい首相は初めてとのこと。プーチン大統領が築いてきた政局安定を基盤に、ロシアの「インフラ」整備が今始まりつつある。

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