J-REITはハイリスク商品なのか?

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2007年11月12日

  • 鳥井 裕史
過去最高水準に達しているボラティリティ

J-REIT市場におけるボラティリティは過去最高水準にある。2007年9月末時点における日次パフォーマンス(250日ローリング)の標準偏差は27.8%にまで上昇、TOPIXの17.4%をはるかに上回る水準である。将来の賃料上昇に対する期待度が投資口価格の動きに影響を及ぼしていることに加え、外国人投資家の取引シェア上昇が需給バランスに大きく影響を与えていることが背景にあると考えられる。

06年11月末から07年5月末までの6ヵ月間で東証REIT指数は約42%上昇した。長期金利が1.6~1.7%台で安定的に推移した一方で、都心のオフィス賃料上昇期待を背景に、J-REIT市場は高いパフォーマンスを遂げた。同期間の価格上昇は、目先の分配金に対するインカムゲイン獲得ではなく、保有資産の価値上昇に伴うエクイティ価値上昇期待、すなわちキャピタルゲイン獲得期待から生じたものであると考えられる。

需給面に関しては、外国人の取引シェア上昇がボラティリティ水準に大きな影響を与えていると思われる。05年前半までは30%以下にとどまっていた外国人の取引シェアは、都心の賃料が本格上昇し始めた05年以降に上昇し始め、直近では60%前後にまで拡大している。海外からの多額の資金流出入が、J-REIT市場に大きな影響を与えていることが読み取れよう。

J-REITの商品特性の再確認

J-REITの商品特性について改めて確認したい。J-REITは不動産の賃貸事業に特化した収益構造であり、収益の源泉は月々の家賃収入を主としている。賃貸事業は開発事業等に比較して収益変動が少なく、安定したキャッシュフローを生み出すことが特徴である。

J-REITは導管性要件(※1)を満たすために、生み出した利益の90%以上を分配することとされている。実際には各REITとも利益のほぼ100%を分配しているため、内部留保による新規投資は減価償却費相当額等に限定される。物件の売却益や増資等により分配金水準にブレが生じることもあるが、主となる賃貸事業利益を源泉とした分配金は比較的安定していると考えられるだろう。商品設計上の特徴から見ると、J-REITのボラティリティ水準は過度に高まっていると考えられ、今後は投資口価格の変動幅の鎮静化が望まれよう。

(※1)支払配当を損金算入するための要件のこと。
標準偏差の推移(日次/250日ローリング)

J-REIT市場における外国人売買シェアの推移

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