10年債利回りの1.5%割れはあるか?

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2007年11月07日

  • 奥原 健夫
国内債券市場は、欧米債券市場で質への逃避が強まる局面では10年債利回りが1.5%半ば付近までは低下するものの、1.5%割れとはなっていない。一方、10月31日に米連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを実施したことで年内に日銀が利上げを実施する可能性は大幅低下し、さらに日銀総裁の交代もからみ年度内の利上げの確率も同時に大幅低下したと考えられる。従って利上げ期待がかかりにくい状況では短期ゾーンは金利が上昇しにくく、同水準を下回りやすい状況になったようにみえる。

しかし、今後も商品市場が高止まりする状況では、同水準が抵抗ラインとなるとみられる。というのは年末にかけて原油先物(WTI)が70ドルを上回る状況が続けば、コアCPIがエネルギー要因によりプラスに転化しやすく、現在の90ドル前後の水準では全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は+0.3%まで上昇することも想定される。従って、消費者物価の動向が長期金利の上昇要因として寄与するとみられるからである。

10年債利回りを実質期待成長率(物価連動国債利回り)と期待インフレ率(10年債利回り-物価連動国債利回り、Break Even Inflation)に要因分解すると、期待インフレ率は低下余地が小さく、物価指標が上昇した場合には同様に上昇しやすい。従って、10年債利回りが1.5%割れとなるには実質期待成長率の低下、つまり米国の景気減速の強まりと利下げの継続が必要ということになる。米国の資産担保証券市場は信用収縮の緩和期待で9月後半から10月前半は一旦価格上昇したものの、その後は調整が続き、サブプライム・ショック時の価格水準を下回り始めている。また住宅関連は調整が加速し、さらに雇用統計、消費統計にも減速感が強まってきている。FRBの声明などからは12月利下げの見方は後退したが、年末は資金調達がクリティカルな状況となることが想定され、利下げされる可能性は低くないと考えられる。

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