ばら撒きの失票効果

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2007年11月01日

  • 原田 泰
参院選における自民党の敗北以来、ばら撒き政策が復活し、改革路線が後退するのではないかと心配する声が高まっているようだ。しかし、私はあまり心配していない。

ばら撒くためにはお金を集めて来なければならない。財政赤字が小さければ、借金してお金をばら撒いても、そのお金が借金であることに国民は気が付かないかもしれない。しかし、これだけ巨額の財政赤字が累積していれば、国民はばら撒けばいずれ増税になると気が付く。増税には票を失う効果、失票効果がある。ばら撒くだけなら集票効果しかないかもれないが、ばら撒き政策は増税を予想させる。そうすると、ばら撒きにも失票効果が現れる。だから、政治家には、ばら撒きを止めて最低限度の増税で財政再建を行おうというインセンティブがある。

長期的に見れば、歳出の抑制だけでは財政を再建できないだろう。高齢化に伴う社会保障支出が膨大なものになっていくからだ。しかし、自民党の通常の内閣が続くと合理的に予想される将来において、高齢化に伴う社会保障支出の増加額はたいしたことはない。団塊の世代はあと5年働き、元気で医療費も大してかからない。病人が増えるのは70歳を超えてからのことだろう。増税しなくても、2011年度までの基礎的財政収支の達成は可能だ。2012年度以降のことは、次の総理に考えてもらえばよい。

先を考えて財源を手当てしないのは無責任だと言う議論は間違いだ。年金制度は、40年後の財源を考えて徴収していたからこそ、基金が無駄に使われ、スキャンダルが続出している。初めから、税で年金を賄い、現在払う分を現在課税していれば、こんなことにはならなかった。今、増税すれば、歳出抑制が不十分になるだけだろう。

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