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パンドラの箱は開けられたのか ~株式対価の会社取得~

2007年10月29日

金融調査部 主任研究員 金本 悠希

10月2日、米シティグループは傘下の日興コーディアルグループを完全子会社化することを発表した。これは、今年5月に解禁された、いわゆる三角合併方式の初の事例といわれる。三角合併方式により、12月開催予定の臨時株主総会で可決されれば、日興株主には、シティ株式が交付されることとなる。

この三角合併は、当初会社法が施行される昨年5月から導入される予定だったが、急遽施行が今年5月まで1年間延期されることとなった。これは、三角合併の場合は、合併の対価として、外国の会社が自社の株式を利用することも認められるので、圧倒的に時価総額に勝る外国の会社が日本の会社に対して敵対的買収をかけることに利用されることが懸念されたためである。

しかし、三角合併を敵対的買収に利用するのは、基本的に難しい。というのは、合併を行うには、予め当事会社が契約を結ぶことが会社法で義務付けられているが、敵対的買収の場合には、相手方経営陣が買収に反対しているため、合併契約を結ぶことができないからである。

このように、三角合併を敵対的買収に利用することは難しいわけだが、では、時価総額の大きな会社が、自社株式を対価とする敵対的買収をかけることが難しいと言い切れるのだろうか?

三角合併を敵対的買収に利用するのが難しいのは、合併には相手方経営陣との契約が必要なためである。一方、敵対的買収の手法として一般的に利用される株式公開買付け(TOB)では、相手方経営陣と契約を結ぶ必要がない。よって、仮にTOBで自社株式を対価とすることができれば、「時価総額の大きな会社が、自社株式を対価として敵対的買収をかけてくる」という懸念は現実のものとなる。

従来から、TOBの対価は金銭が利用されている。しかし、TOBを規制している金融商品取引法(以前は証券取引法)は、株式を対価とすることを禁止しておらず認めている。しかも、実は、この株式対価のTOBは、シティによる三角合併とほぼ期を同じくして、9月28日から東証二部上場企業によって行われている。

公開買付けの対象株式

TOBを行う会社が日本の会社であれば、株式対価のTOBも一般化することは難しいと考えられる。これは、株式対価のTOBを行うには、実際上、会社法の有利発行規制に該当し株主総会で特別決議を取る必要があるためである。TOBは、株主が応募してくれるよう3割程度のプレミアムをつけて行われることが多い。これを、募集株式の発行という文脈で見れば、募集株式(A株)を引受ける者(X株主)は、たとえば、10万円相当の株式(X株)を出資することによって13万円相当(10万円に対して30%のプレミアム)の募集株式(A株)を引受けることになる。これは、払込金額が引受人に特に有利な金額と考えられ、会社法により株主総会の特別決議が要求されると考えられる。しかし、このハードルは、実務上は非常に高いであろう。

このように敵対的買収者が日本企業であれば、時価総額が大きくても、株式を対価として時価総額の小さい会社を買収することは実際上困難である。しかし、敵対的買収者が海外企業であれば、日本の会社法は適用されない。課税関係など検討すべき問題はあるが、将来的に海外企業によって株式対価の敵対的TOBが行われる可能性はゼロとは言えないであろう。

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執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 金本 悠希