大文字送り火に想う

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2007年10月22日

  • 菅原 晴樹

夏の京都の始まりは祇園祭、そして終わりは送り火。8月16日「冥府にかえる精霊を送る」京都五山送り火を拝みに行きました。宿泊先のホテルの屋上にあがり、点火を今か今かと心待ちにしていました。いよいよ午後8時、東山如意が嶽の「大文字」の点火を皮切りに、順次、北の松ヶ崎西山・東山の「妙法」、西賀茂船山の「船形」、衣笠大北山の「左大文字」、そして8時20分、西の鳥居本曼荼羅山の「鳥居形」と続きました。

「大」の字は、大乗仏教の大で、先祖の霊が送り火を頼りに冥府に帰る際、大きな乗り物で大勢の人が帰れるようにとの思いが込められているそうです。また、「鳥居形」は火床が108箇所。送り火の炎とともに百八つの煩悩も焼き尽くすとの意味が含まれているとのこと。生前、神道の信者であった人たちは、この鳥居をくぐって冥府に送られていくとも言われています。

夜の虚空に五つの文字や形がくっきりと浮かび上がり、そして静かに闇夜に帰っていくように消えていきました。

初めて送り火を拝むことができましたが、関東で言われるような華やかな「大文字焼き」のイメージではなく、灯火を思わせる柔らかい炎でした。

老眼になった目を細めて遠くの「大文字」を眺めているうちに、不謹慎ながら「大」の字が一瞬「太」に見えたのでした。

ふと頭を過ぎったのが「メタボリック(代謝異常)症候群」のこと。わが国の40歳以上の男性の2人に1人、女性の5人に1人が該当者とその予備軍と言われています。

肥満、高血圧、高血糖、高脂血などの生活習慣病は、心筋梗塞や脳梗塞などを発症するリスクを高めるとともに医療費を増加させる要因となります。

厚生労働省は、早期に医療費を抑制することを目的として健康保険法等の改正を行い、来年度から健康保険組合などの医療保険者による「特定健康診査・特定保健指導」を実施に移します。

「特定健康診査」によって該当者または予備軍と診断された人たちは、生活習慣の改善や運動プログラム等の「特定保健指導」を受けることになります。

企業の経営資源の一つである「人」が健康であることは、働く本人はもちろんのこと、その企業にとっても望ましいことです。

とは言え、現実はなかなかむずかしいものです。

わが身を振り返ると、やはり仕事に追われ、毎日の生活が不規則になっています。ただし、運動に限って言えば、30年来サンデーテニスを続けています。それでも近頃お腹周りが気になり始めました。食事に気を配りながら、これからも鞍馬の山歩きや登りのきつい神護寺参拝を楽しみたいものです。

岩倉の実相院の「床紅葉」が鮮やかに映える頃には、いくらか身も軽くなっているかと思います。これからの努力次第ではありますが。
 

夏の夜は まだよひながら 明けぬるを
雲のいづこに 月やどるらむ (古今和歌集 清原深養父)

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