与党も野党も踏み出せず、睨み会う【給油新法】

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2007年10月18日

  • 吉川 満
海上自衛隊の給油活動を継続するための【新テロ対策特別措置法案】が17日、臨時閣議で決定された。政府・与党は基本的には、ここで纏めた法案で押し通したいと考えている。しかし、本当に今国会での法律成立を目指すのかどうかははっきりしていない。民主党は対案となる法案を提出するのかどうかまだ決まっていない。民主党は小沢代表が雑誌【世界】で発表した案が世論の支持を得られるかどうか、いまひとつ確証がもてないでいる。
というわけで与野党ともにこれ以上の踏み込みは難しく、通常国会に継続審議となる可能性も指摘されている。

政府が懸念しているのは法案を通そうとすると、衆院は可決、参院は否決となる事がほぼ確実なので、それをさらに進めるためには衆議院の再議決の手続が必要になる事である。衆議院の再議決手続を強行しようとすると、参議院で多数を占める野党議員が反発し、内閣不信任案が提出される可能性が強い事である。そうすれば結果的に野党の望む政権後退を後押ししてしまう事になりかねない。そこで山崎氏などは早くも、通常国会への先送りをもくろんでいるとの記事もある。

民主党が現在悩んでいるのは、小沢代表が雑誌【世界】で今月発表した、国連決議に基づく、自衛隊の正式給油活動参加論を、政府への対案として法案提出に踏み切るかどうかである。小沢代表は、給油活動は国連が正式に決定したのなら、日本が参加しても合憲だと考えている。しかし、民主党の中には旧社会党系、旧民主党系など、給油活動は違憲であると考える議員も残っている。そうした多様な構成の中で、果たして小沢理論に基づく対案を法案として提出することができるかどうか、いまひとつはっきりしないのである。また、国民が小沢案に対しどう反応するかもいまひとつはっきりしていない。
そこで民主党としても、大きな具体的行動は曖昧に残しておいて、とりあえず審議入りに反対するぐらいしか妙案はないのである。

与党の側にも野党の側にも局面打開の名案が無いとなると、次の方向が政治力学的な面から決まる事になる可脳性が高くなる。今のところは、どちらにとって睨み合いのマイナスが大きいとも断じがたい。与党は政権党として、方向を示す義務があるともいえるが、野党も勢力伯仲下では、与党の優柔不断がもしあるとしたら、それを積極的に是正する責任があるともいえる。
現段階では、どちらが有利ともいえないという要素が強い。
となると、次ぎの政治的な不祥事の発覚が、身動きの取れなくなっている与野党間の勢いの不均衡に結びつき、それをきっかけに一気に、局面が動く可能性もある。
筆者としては、そうした展開にはならず、せっかくの好機なのであるから、これからの日本の方向をじっくり議論する方向を望むばかりなのであるが。

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