日本の生きる道

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2007年10月11日

  • 佐藤 清一郎
よく言われるように、アジアは世界の成長センターである。中国の実質GDP成長率は、引き続き、年11%程度、インドやベトナムは、同8%を超えている。そんな中、日本はと言えば、がんばっても同2%程度で、アジアにありながら、成長センターという言葉とは程遠い。それどころか、成熟した社会となり、これに、少子・高齢化という厳しい現実が加わっている。成長、そして豊かさを求めて、ひた走る他のアジアの国と日本とでは、明らかに、雰囲気が違う。日本は、先に成長したので、他のアジアの国とは異なると言ってしまえばそれまでだが、やや寂しい。

低落しないために、日本が模索すべき方向は、グローバル化である。具体的には、貿易活動の活発化と、直接投資の促進である。ここで直接投資とは、成長力の高い地域へと進出していく、いわゆる対外直接投資と、海外からの直接投資を日本に呼び込む、いわゆる対内直接投資の2つを意味する。

日本はこれまで、円高回避などの理由で、海外への直接投資は積極的に行ってきたので、海外進出ノウハウは、相当に蓄積されてきている。しかし一方で、海外からの投資受け入れとなると、話は、極端に違ってくる。日本は、戦後、できるだけ多くのことを自国でやろうとする、いわゆるフルセット型成長を選択したため、海外からの投資受け入れについては、めっぽう苦手である。

近年、状況は大きく変化している。日本は、それまでのフルセット型を修正してきているし、日本周辺を見れば、中国、ロシアなどが高成長を続け、海外投資に十分な資金を蓄積してきている。日本は、こうした状況変化を適切に見抜くべきである。実際、アジアの企業は、アジア域内全体を視野に入れ、何処の国で生産するのが最適なのか、また、何処の国で販売するのが適当かといったことを常に考えながら行動している。こうした動きの中で、日本も、直接投資のターゲットとなる可能性は十分にある。海外企業のニーズを的確にとらえ、果敢に制度変更にチャレンジする精神が必要だ。そうすれば、将来的には、海外からの投資は増加し、アジアの成長活力を感じ取れる可能性は高まる。

日本では今、持続的成長維持のために、日本人が、投資を通じてアジア地域などへ出て行くという国際化もさることながら、アジアの人々が、投資を通じて、日本に来るという国際化が、より強く求められている。これが現実化してしまうことに抵抗を感じる人も多いかもしれないが、そこは、考え方を変えていく必要がある。

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