投資信託の課題
2007年10月03日
2007年8月3日(金)~8月17日(金)にかけて、大和総研と日本ファイナンシャル・プランナーズ協会は共同で、FPを対象とする家計の金融資産に関するアンケート調査を実施した(※1)。 調査の結果、FPが最も注目している金融商品は、投資信託(※2)との回答を得られた。FPが投資信託を薦める理由としては、「資産分散のため(現在保有してないため、新規購入を薦める)」、「少額から投資できる」、「値上がり益を期待できる」、「プロの投資家が運用している」が順に挙がった。 一方、FPが投資信託のデメリットと考えている点を整理したのが以下のグラフである。 最も多かったのは、「販売手数料や運用手数料がかかる」であり、75%の回答があった。FPが顧客に勧める投資信託を選択する際に、手数料は重要な要素となっている。 投資信託はプロの投資家に運用を委託する商品であり、運用報酬、信託銀行の管理・保管に対する対価及び代行手数料などの信託報酬や販売手数料などが掛かる分、自ら運用する場合と比べて手数料が高くなる。ただし、個人投資家の立場になれば、手数料が安いほうがよいという意見はもっともであろう。 わが国のFPの顧客層は、富裕層ではなく平均的な家計の層が中心である。このような層をバックに持つFPの意見は、今後、投資信託の手数料を引き下げる要因になるかもしれない。 2番目の問題点として、「プロに任せても期待したリターンが保証されているわけではない」、3番目として「元本割れのリスクがある」が挙げられた。これらは、手数料を払ってプロに運用を委託しているのに、ほとんど利益が得られない場合や、損失が出る場合もあることから挙げられたものであろう。もちろん、パフォーマンスの向上には注力すべきだが、プロに任せているからといって、いかなる環境でも必ず利益を上げられるというものではない。この点については、顧客に対する十分な説明が必要であろう。 4番目の「運用内容の報告が不十分」、5番目の「投資信託の数が多く、選択が困難」については、投資信託の運用会社や販売会社が一層、顧客のケアに注力することによって、解決できる問題であろう。 9月30日、投資家保護の徹底を目指す金融商品取引法が施行された。 今後も投資信託の商品数が飛躍的に増え、商品内容も多様化していくなか、投資家は、自ら運用やリスクについての情報を得る努力も必要である一方で、証券会社や銀行等の金融機関は、今一度顧客の視点に立つことが求められる。 (※1) 調査結果は「家計の金融資産に関するアンケート調査報告書」DIR Market Bulletin Vol.14(近刊)でまとめられる。 (※2 )「国内投資信託」、「外国投資信託」、「不動産投資信託(REIT)・不動産証券化商品」を含む。 |
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金融調査部
金融調査部長 鳥毛 拓馬
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