新制度対応で公益法人に募るイライラ

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2007年09月26日

  • 経済調査部 市川 拓也

新公益法人制度にかかる公益法人認定法と整備法の政令・内閣府令が公布され、また新法施行も来年12月1日に決まった。この新法は昨年5月26日に可決・成立したものであるが、当時は政省令に委ねられている部分が多いため、これを待たねばよくわからないといった見方があった。この意味からすれば、今回の政令・内閣府令の公布によって、ようやく新制度のスタートラインがみえてきたといえる。

今回の政令・内閣府令については、行政庁マター以外の部分は、今年4月に発足した公益認定等委員会に諮問され、そこからの答申を受けて作成されたものである。原案と実際に公布された政令・内閣府令とではさほど大きな違いはなく、その意味では第三者としての委員会の意見が大きく反映されたものであるといえよう。民間の公益活動の増進を図らんとする今回の公益法人制度改革の基本精神に照らして考えれば、なかなかの滑り出しとの評価もできる。

ただし、今回の政令・内閣府令によって、新制度への対応が進められるとの実感を得る公益法人関係者がどれだけいるのかは疑わしいといわざるを得ない。なぜなら、待ちに待った政令・府令をもってしても、未確定な部分が少なくないためである。「不特定かつ多数の者の利益」、「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力」、「特別の利益」、「公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額」など個々の用語の定義や、「公益目的事業に係る事業費」、「収益事業等に係る事業費」、「管理費」といった指標の計算のもととなる明確な区分方法も明らかになっていないため、公益認定基準を満たすのかどうか、実際に照らし合わせて検証しようにもやりようがないといった状況におかれたままなのである。

もちろん、公益認定等委員会も難解な問題を後回しにしたわけではなく、的確な制度設計を心がけながら、順序どおり検討を行なっているのも理解できる。約110年ぶりの大改革にはそれくらいの慎重さも必要なのだろう。しかし、来年12月の法施行後、すぐに移行申請を行なおうと考えている公益法人にとっては、この状況でどう準備をすればよいのか迷ってしまう。公益認定を受けたいが、現在の事業内容で可能なのかどうか。事業を整理してまで認定を受けて財務基盤が揺るがないのかどうか。通常の一般社団・財団法人に移行した方がかえって思った活動ができるとの判断もあるのかどうか。新法施行まで約1年2ヶ月となった現時点において、新制度を細かく捉えた上での判断ができないというのは非常につらいに違いない。早期の新公益法人への移行を考える真っ直ぐな公益法人ほど、当面はイライラが募ることになるのではなかろうか。

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