楽観できないサブプライム・ショック

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2007年08月23日

  • 奥原 健夫
8月に入ってもサブプライム・ショックは続き、ヘッジファンドの解約停止や住宅関連金融機関の破綻が続いた。さらに資産担保証券などをかかえる企業は資産担保型CP(ABCP)の発行が行えないなど短期市場での資金の調達ができず、金融機能が麻痺する状況にまで至った。これに対し、欧州中央銀行(ECB)、米連邦準備理事会(FRB)は大量の資金供給オペを実施し、金融機能の安定策を講じた。また8月17日にはFRBが日本の貸付金利に該当する公定歩合(Discount Rate)を6.25%から5.75%に引き下げることで、さらに流動性が高まるよう政策変更した。

この結果、8月17日に日経平均株価が終値で15273.68円をつけるなど株式市場は大幅調整していたが、その後は上昇に転じている。流動性の高い株式市場に資金が戻れば、社債市場や資産担保証券市場にも安心感が広がり、同時に金融市場の混乱は終息に向かいやすくなる。

しかしながら今回の金融システム不安が沈静化するにはまだ時間がかかりそうである。というのも米国FFレートは誘導水準の5.25%を下回っているものの、LIBORやABCPなどのクレジット・リスクがある金利は高止まりし、また問題資産を抱える金融機関への貸し渋りが和らぐ状況には至っていないからである。つまり政策金利の引き下げが実施されても、問題資産の売却と信用補完が進まない状況では金融機能の正常化とはなりにくいことを示している。

短期市場の混乱がさらに続くようであれば、再び株式市場に調整バイアスがかかりやすく、ここ許の下値をさらに更新することも想定する必要がでてくる。今後はFRBによるFFレート引き下げなどが予想されるが、事態収拾に向うかは社債スプレッドの動向だけでなく、LIBORやABCPの政策金利に対する上乗せ金利水準にも注視していくことになる。

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