M&Aと和の文化~その後~
2007年08月17日
本年5月より当事会社の株式以外を対価とする合併、株式交換等の再編が認められることとなった。いわゆる三角合併の解禁である。これにより、外資系企業による「敵対的」買収が激増するのではないかと予想する向きもあったが、今のところ大きな動きはない。その一方で、国内外の投資ファンドによるTOBやMBOに対抗するTOBなどが注目を集めた。
国内外の投資ファンドや事業会社によるTOBなどの買収敵対的買収防衛策への関心が高まる中、先般、食品メーカーと投資ファンドとの間の係争について最高裁の判断がでた。投資ファンド側の主張は退けられ、新株予約権の無償割当てが認められる結果となった。結果だけを見ると、メーカー側の完勝と言えなくもない。しかしながら、投資ファンドの目的はそもそも投資資金の運用にあることを考えると、確認はしていないが、少なくとも元はとっているとも言える。ある意味で両者は引き分けではなかったのか。とはいえ、本案件は有事の買収防衛策の導入である点と、株主総会の特別決議があった点で、いくつかの事案と異なることは注意しなければならない。
一般に、敵対的買収において経営者と投資ファンドの対決が取り沙汰されるが、結局は最後の相手は株主と言うことになるのではないか。メーカー側の株主は投資ファンド側の提案(TOB)に対して、NOと言ったわけで、裁判所はそこにも着目した。過去には、地域社会がNOと言ったため断念せざるを得なかった事案もある。M&Aの時代とは言え、買収者は被買収企業の経営者、株主、従業員等のステークホルダーの信頼を勝ち得るだけの提案と説得が必要であるとの教訓であろう。わが国は飛鳥の時代から今もなお和(倭)の国なのであろう。
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